明暗 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1973
感想 : 126
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漱石の未完作品。高校生のころ、「いやはや、大人だわ~」と思いながら読んでもさっぱりわからない、記憶も残らないまま時がすぎました。
大人になって再読してみると、なかなか面白い小説だと思いながら読了しました。我欲、我執だらけの登場人物のねちっこいやりとりや、金や地位名誉がらみの世俗描写が、牛のような歩みで描かれています。

「明暗」の主題、はたまた漱石が晩年ころに唱えたといわれている「則天去私」を巡って、漱石亡き後、文壇は百家争鳴の様相。結局、則天去私とは何なのか明快にはなっていないようですが、漱石は若いころに老子に関する論文も書いているようですし、東洋思想や禅などから影響を受けていますので、この作品に限らずそのようなニュアンスが滲み出ていますよね。

この作品では、とりわけ女性陣のキャラが際立っていて凄い。当時の古い慣習、結婚制度の因習、低い地位や身分に置かれた女性らの天然・自然な内面や行動の描写、優柔不断で見栄っ張りな男性の弱さやあわれみ、トリックスターのような小林の言動、いろいろな人間の赤裸々な姿がねっちりと描き出されています。さまざまな束縛――外面も内面さえ――からも解き放たれた人間、陰陽、明暗あって無為自然、男も女もそれでいいじゃない、明のみならず暗にも、醜にさえも人間美を見い出したような、ある種、漱石の諦観すら感じられて興味深い。なんだかんだ言っても、漱石はきっと人間というものが好きなんでしょうね~(^^♪

一番いいところで絶筆となってしまって残念ですが、この続きは水村美苗さんの「続明暗」で楽しんでみたいです(^^♪

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感想投稿日 : 2017年2月2日
本棚登録日 : 2017年1月27日

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