中国シフト

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  • 小学館 (2002年6月29日発売)
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◎必要となるのは、日本の会社と中国の会社でコンシェルジェ的な役割を担う人や組織。
「ポスト・ユニクロ型ビジネス」で「中国シフト」のできた会社が21世紀の勝ち組になる。


◎中国の人件費が高騰して日本のような状況になる時代は、しばらくやってこない。したがって、工作機械や生産機械は今後も当分、日本が強みを発揮できるはずであり、だからこそ、この分野は日本のものづくりの牙城としてひたすら磨き、守らなければならない。


◎これからは場所にこだわってはいけない。日本国内にこだわらず、世界の最適生産地で作って最適マーケットで1円でも安く売る。そうすればどんな製造業でも必ず生き残っていける。


◎ユニクロの強さの秘密は、既存のものを3分の1の値段で売ること。したがって、全ての領域でそれを狙うべき。

消費者と最適生産地を最短距離で結ぶこと。それを実行していけば、おそらく湯に黒は成長を続けるに違いない。
ほとんど「商い無限」だと私は思う。


◎ウォルマートは98年にドイツに進出したとき、国内4~5番目の会社を買った。そうしたら、その会社の建て直しに時間がかかり、泥沼にはまった。今回の日本進出(西友と資本提携)はこのパターンだった。

西友は国内4位で地域3番店、4番店が多く、この10年ほとんど新たな投資をしていない。

◎イトーヨーカ堂はウォルマートに借りがある。アメリカでセブに礼文の建て直しにウォルマートの物流と調達部を使わせてもらったし、商品開発も共同でしている。
しかし、アメリカでお友達だからといって、日本でも腹を割って共同で商品開発をsルカといえば大いに問題。


◎西友よりも地域1番店を持っているイトーヨーカ堂にとって、西友と手を組むメリットはない。イトーヨーカ堂の目の上のたんこぶは「イオン」。それに対抗していく戦略としては、西友と提携したウォルマートと躍ってみてもプラスになることはない。


◎台湾は経済的に見ると、中国との直接交易をやらざるをえない。やって中国を草刈場として取り込むか、やらないで企業に大脱出されるかの瀬戸際。2つの中国か1つの中国かなんて建前を言っている場合ではない。


◎韓国の場合、財閥がIMFによって解体されたあと、かなり弱体化されたが、コアに経営資源を集中した結果、サムソン、LG、ヒュンダイはぐっと強くなた。
しかし「大字」のように消滅してしまったところも出た。財閥から見ると政府が言っているようなリストラをすると、ストライキが続発するから耐えられない。そこで彼らは続々と中国シフトを始めている。


◎ソウルから瀋陽や大連までは約1l時間。瀋陽のホテルには韓国の放送が2局入っている。日本語放送はNHKのみ。それほど韓国と中国は近づいている。


◎大統領や総統が見ているのは、北朝鮮や独立。経済界が見ているのは両国とも中国と日本。台湾の企業も韓国の財閥も、コストが安く将来のマーケットとしても魅力的な中国に生産拠点を移し、当面はマーケットの大きい日本に直接進出することを目指している。


◎日本は中国とコストで競争したら絶対に勝てない。競争してはいけない。中国のコスト競争力に結び付けてサバイバルを図るべき。それが正しい日本の「ユニクロ化」である。


◎中国の経営者は自分と一族郎党が儲かりさえずればいいという考えの人ばかりだが、劉氏は社員にアメリカ並みの美しくて広々とした仕事環境を作ることを目指してきた。
信頼できるパートナーを得た「間接業務のユニクロ化」プロジェクトは必ず成功する。


◎間接業務を標準化していないために国内の第三者にアウトソーシングもできなければ、国境をまたいで海外に移すことなど考えも起きない。


◎日本企業が間接業務を標準化できない理由は、器用すぎること。
大半の日本企業歯独りが何でもやるというスタイルなので分業が進まず、結局自分がなにをやっているかを人に説明できない。

日本企業にとってコスト削減の第一ステップは間接業務の標準化。


◎日本企業の場合は精神力で片付ける。たまたま優秀な店長がいる店は売り上げが伸びるが、全国の店の売り上げを全体で伸ばしていくという手法が取れない。


◎世界の最先端はホワイトカラーの仕事を海外にシフトすることに重点が移っている。


◎シンセンなどの免税区で生産する(生産部品に税金はかからない)。輸出する場合は免税なので、香港に持ってきて、改めて中国に輸出する。そうすれば、その会社は香港では外国企業なので、中国に輸出しても税金はかからない。一度中国から香港へ輸出するので、中国からは輸出貢献で表彰される。

しかし、これは書類上のこと。実際には書類のみが香港に行き、製品は香港を経由しないで直接、中国国内の工場にトラックで運ばれている。
書類を香港に通すことにより、中国と香港両方の税制上の特典を享受している。


◎日本が再び繁栄するには、海外から労働力を移入するしかないと言われる。本能的に拒否しているが、アメリカや中国を見ていると、たしかに無理やりにでも人口を増やすしか活力を取り戻す方法はないのかも。


◎規制撤廃して優勝劣敗の競争社会を再び導入すること。
統括機構を根本的に変えて、道州制を導入し、世界中から人、金、モノに来てもらう仕掛けが必要。


◎活力は若い人々が競争してより強力な事業を起こそうと走り始めなくては出てこない。世界一のスピードで高齢化が進む日本では、世界一のスピードで秩序回復しなければ膠のように固まってしまう。


◎消費者が成長するしかない。その成長を新しいタイプの事業家が加速する、という循環が生まれなくてはならない。これは日本の生活者にとって、まさに価値観の大転換であり、「生活の質を上げて、コストを下げる」最良の機会、と前向きに捉えなくてはいいけない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 流通
感想投稿日 : 2010年11月21日
読了日 : 2010年11月5日
本棚登録日 : 2009年12月11日

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