三島由紀夫23歳の処女長編。彼はすでに19歳で短篇集『花ざかりの森』を上梓していたが、この最初の長編小説には初期の三島の作風が色濃く反映されている。すなわち、あらゆる意味において、きわめて観念的な小説なのだ。ここでは、生も、そして死もまた観念の中にしか存在しない。当時の三島には早熟と夭折の天才、ラディゲが強く意識されていたようだが、内容や小説作法は三島に独自のものだ。ただし、こうした登場人物たちの心理のありようを克明に、かつ分析的に描いていくといった手法は、やがては物語りそのもの中に解消していくのだが。
全体としては、観念的に過ぎる小説だが、作中では第4章「周到な共謀(上)」で、清子が伝家の短刀を取り出すあたりが最も小説的で、また三島らしい表現だ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
☆日本文学
- 感想投稿日 : 2014年4月19日
- 読了日 : 2014年4月18日
- 本棚登録日 : 2014年4月19日
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