学生アパートで、まさによく学びよく遊んだ仲間がいた。
学校も学部もさまざまで、ついでに言えば経済環境もいろいろだったので、夜を徹した議論をしていても多面的な見方があるということがわかり、その後の人生に大きくていい影響を受けたと思う。
就職が視野に入ってきた頃、その中でも優秀で一目置かれていたひとりがスッと消えていった。
彼は在日でパチンコ屋の息子だった。
応募条件に日本国籍が明記されている時代だった。
風の噂で、親の後を継いでパチンコ経営者となったと聞いた。
この本を読んで、彼はいまどうしているだろうかと思いを馳せたが、連絡先もわからない。
自分が直接は知らない上巻の敗戦前のほうが興味深く読めた。
下巻に入ると、ちょっとリアリティーに欠けるところが見え隠れしてしまう。
もっと声高に日本人の在日朝鮮人差別を糾弾するような内容かと思っていたが、身近でも見聞きしたようなことが淡々と書かれているのが、かえってインパクトがある。
ニューヨーク・タイムズで、あれほど長い間ベストセラー・リストの上位を占めていたのに、こんなに翻訳が遅くなるのは不思議だった。
新大久保や川崎で日の丸や旭日旗を振り回している人たちにも読んでもらいたい。三行以上の文章は嫌いだろうけど。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
世界文学
- 感想投稿日 : 2020年9月23日
- 読了日 : 2020年9月23日
- 本棚登録日 : 2020年9月10日
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