グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房 (2023年7月19日発売)
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本棚登録 : 263
感想 : 24
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高野史緒の作品は初めて読んだ。他の本として「混ぜるな危険」は所有しているもののまだ読んでいない。これまでもいくつかの作品が上位にランクインしていたが、この度ベストSF2023国内篇でめでたく第1位を受賞された。おめでとうございます。その様な評判もあり早速購入して読んだ。

裏表紙のあらすじやSFが読みたい2024年度版の書評を頭に入れて読み進めた。すぐにでも今流行りのSFアニメ映画になりそうな予感がする。話の設定・構成も申し分ない。本の表紙を見るといい感じの青春SFで、特定の地域が脚光を浴びる等、話題性も十分に獲得できるだろう。もしかしたら私の知らない所で既にその様な話が進んでいて、数年後には新海誠監督で公開され、日本アカデミー賞を受賞するかもしれない。

半分くらい読んだところで、ふと考える。話がなかなか広がって行かない。文調の変化が乏しく、初期設定とあまり変わらないやや単調な展開が続く。この雰囲気は全体の3/4まで続く。そして急な展開が訪れ、いきなりハードSFモードに突入する。結末は、ありがちなパラレルワールドの融合。しかも、女子の方の世界が吸収されるだなんて、男性の作家がこの様な結末を選んだら、もう世間から叩かれまくるだろう。結果的には全体の構成が少々バランスに欠けており、映像や演出サイドでかなり作り込まないとアニメ化の際にはなかなかしんどいと思われる。

大森望・日下三蔵・藤井大洋・林譲治の後押しが大きいということは今後も素晴らしい作品が出てきて高評価を得る可能性は高い。多分今回の作品が1位に選ばれたのはその様な要素があるからなのだろう。私は1位でない作品の方を評価している。これは私の個人的な見解であり、いつの日か蔵書の「混ぜるな危険」も読む日がきっと来ると思うが、それまでにはかなり長い年月が必要だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF小説
感想投稿日 : 2024年3月26日
読了日 : 2024年3月21日
本棚登録日 : 2024年3月26日

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