侍女の物語

  • 新潮社 (1990年3月1日発売)
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本棚登録 : 132
感想 : 23
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上野千鶴子先生がNHKの100分で名著で言及されていたのをきっかけに、フェミニズム文学であること以外ほとんど前情報なく読み始めた。
近代の家父長制の中で苦しめられる女性の物語かと思ったら近未来ディストピアSF小説としてまずとても面白く、半分近くから止まらなかった。衆人環視のなか罪人の処刑が行われたり、その死体が壁に吊り下げられているというGOTのようなファンタジーの中の中世的な世界観という思わぬポイントで引き込まれた。
しかし女性が自由と尊厳を奪われて生む機械としてのみ扱われる描写の一つ一つはリアルな恐怖として感じられた。実際に、イランではスカーフを外した沢山の女性が殺されているし、中東の国々には名誉の殺人も残っている。アフガニスタンは女子学生の通学と就労を禁止している。日本も例外ではなく、女性は結婚すると実質的に改姓を強要され、子供を産むことと大学進学をトレードオフにするような政策が進んでいる。「侍女の物語」が今生きている世界と地続きだと感じざるを得ない。
このような本が30年以上前に出版されたことに驚く。
全ての人が読むべきだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年3月26日
読了日 : 2023年3月26日
本棚登録日 : 2023年3月25日

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