BOOKS桜鈴堂というところが出している電子書籍。Kindleでは残念ながらモノクロだけど、表紙の雰囲気に惹かれて手を出した。挿絵付きなのも嬉しい。
電子書籍にも誤植ってあるのか……という発見をしたのはさておき、やさしい童話の調子でディテール豊かに綴られていく物語は美しく深遠でとてもよかった。
アンデルセンの「人魚姫」然り、キリスト教的な世界観を前提とした「魂」や人外のものの扱い方は、本音を言うと好みから外れるところ。人魚の拒絶や僧侶の説教に胡乱な気持ちになったのが、いわば外道の手段で魂を放逐してしまうという展開から一気に引き込まれた。恋は思案のほかとはこういうことかも。この世界観で、人魚を相手にしてというところで、すでに愛の究極系が描かれているような。
赤毛の魔女のうたう台詞と、魂の語る遍歴の千夜一夜物語を思わせる興趣が特に好き。僧侶の祝福と、遠く去っていったという海の一族の終幕も。
今読んでいる途中のワイルド童話集にも同じお話が入っていたりする。読むのが楽しみ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2019年5月26日
- 読了日 : 2019年5月26日
- 本棚登録日 : 2019年5月26日
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