玻璃の天 (文春文庫 き 17-5)

著者 :
  • 文藝春秋 (2009年9月4日発売)
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本棚登録 : 1849
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ベッキーさんシリーズの第2弾。第1弾の『街の灯』は、2003年に本格ミステリ・マスターズの1冊として出たときに買っていた。マスターズは京極夏彦さんの装丁だが、本書はマスターズではなく、当然、装丁に連続性はない。なんだかそれが業腹で、ついつい読まずにここまできてしまった。
丁寧な筆致が見事に昭和初期の情景を浮かび上がらせる。円紫さんシリーズの「わたし」が本シリーズの「わたし」にも重なる。短編なので、独立して読めるが、所々に物語に通底する伏線が張られている。おそらく未読のシリーズ完結篇に連なるものが、この時点で北村さんの頭の中にはできていたのだろう。
「幻の橋」でベッキーさんが口にする『漢書』の一節、善く敗るる者は亡びず。昨今の情勢を見るに噛みしめたい言葉。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年4月12日
読了日 : 2020年4月12日
本棚登録日 : 2020年4月12日

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