タイトルは知っていても、実際には読んでいない名作は山ほどある。本書も気になっていた1冊。そのあまりに強烈なタイトルから、日本沈没時のパニックに焦点を当てた作品だと思っていた。ところが、本書は日本沈没自体はエピローグとして、日本列島沈没という恐ろしい可能性に気づき、世間に秘匿したまま対策を講じる科学者たちの苦悩を克明に描き続ける。1960〜70年代の最新の科学知見が分段に盛り込まれ、日本沈没のリアリティが高められる。現代の地震学によると日本の沈没は考えにくいそうだが、阪神・淡路大震災、東日本大震災の経験を思い起こさずにはいられない。また本書は優れた文明論にもなっている。
しかし、やはり現在のコロナ禍による混乱と照らし合わさずに読むのは難しい。緊急事態宣言、国難などなど、この数カ月で覚えた言葉が本書にも多数登場する。壮大な思考実験であり、シミュレーションである本書では、科学者のデータに基づき、首相はある決断を下す。翻って現実のコロナ禍では、科学者の懸命な努力に対し……。
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- 感想投稿日 : 2020年6月8日
- 読了日 : 2020年6月8日
- 本棚登録日 : 2020年6月7日
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