レンブラントの身震い (新潮クレスト・ブックス)

  • 新潮社 (2020年11月26日発売)
3.57
  • (7)
  • (10)
  • (14)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 242
感想 : 22
3

2016年、「失敗から学ぶコードに基づくアルゴリズム」ディープラーニングによって造られたAIが世界一の囲碁棋士を打ち破った。ゲーム、絵画、音楽、文学、そして数学のように創造性が必要とされてきた分野も、AIの領域となる未来がくるのか。数学者が楽しく解説。


いま話題のAIとクリエイティヴィティーの問題をドンピシャで捉えた一冊。とはいえ、タイトルと表紙から連想する画像生成AIの話はそこまで大きなトピックではない。本書で大きく取り上げられるのはアルファ碁と音楽と数学である。
特に、ともすれば一番AIと互換性があるかのように思われてしまう数学が創造的な行為なのだと説く章は、数学者であるソートイの熱が伝わってくる。ここを書きたくてこの本を書き始めたんじゃないかと思うほど。一方で、音楽理論や囲碁も数学に近しいからこそAIの活躍が見込める分野でもある。
読んでいて思ったのは、人間には人間らしい考え方のクセがあり、AIにはAIのクセがあるということだ。今は"異文化"であるそのクセが新鮮に見えている段階。そして、人間のなかにもAIに近い考え方のクセを持つ人びとがいて、それが数学者なのではないだろうか。
たとえば今、スマホで撮影・編集が簡単にできるようになったことで、カメラマンや映像編集の仕事は変容しつつあるのだと思う。アルゴリズムによる変化もそれと同じく、「AIに仕事を奪われる!」と単純に騒ぐのとは違うかたちで現れてくるのだろう。Spotifyがフェイク(というか虚無)のアーティストを創りだし、プレイリストに混ぜてまんまとヒットさせていたという話は知らなかったし面白かった。AIが作った「○○っぽい曲」が巷に溢れたら、それをまたアルゴリズムがボトムアップで学んで「○○っぽい曲っぽい曲」を作るんだろうか。でもそれって人間もやってることだよな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2022年10月11日
読了日 : 2022年9月23日
本棚登録日 : 2022年10月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする