日本語の歴史 (岩波新書 新赤版 1018)

著者 :
  • 岩波書店 (2006年5月19日発売)
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奈良、平安、鎌倉・室町・江戸・明治と言葉の変化を区切ってその歴史を概説する。奈良は文字、平安は文章、鎌倉・室町は文法、江戸は音韻と語彙、明治は書き言葉と話し言葉とそれぞれ区分ごと中心となるテーマをもうけて語っているため分かりやすい。
時代ごとに日本語がどうかわっていったのかが納得でき、優しい語り口調ですらすらと読める。
最も興味があったのは明治の言文一致運動。
激変する話し言葉の世界に比べて、明治まで、書き言葉は奈良時代からずっと外国の言葉である漢文か漢文調の漢式和文で書かれていたという。西欧文明と出会い、国民の教育こそ国家の成長の要であると痛感した当時の偉い人たちは、どうして国民を教育し学問を教えようかと頭を捻っていた。が、出てきたのは漢文訓読調のカチコチの文章だった。この流れを知ると福沢諭吉の「学問のすゝめ」は驚きの読みやすさである。そこから尾崎紅葉のである体の登場により自然をありのまま写しとる欲求に応える言文一致は盛んになっていった。最後に文語体が消えたのは1945年、終戦を迎えてからであった。80年の長きに渡った言文一致運動がようやく役目を終えたのである。
現代は誰でもSNSやらで文章を書き発信する時代で、そこで目にする書き言葉は限りなく喋ったままに近い言文一致そのものだったのだ、と認識をあらためた次第です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 言語
感想投稿日 : 2020年12月9日
読了日 : 2020年12月9日
本棚登録日 : 2020年12月9日

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