喧嘩

著者 :
  • KADOKAWA (2016年12月9日発売)
3.63
  • (15)
  • (70)
  • (62)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 394
感想 : 59
3

「疫病神シリーズ」第6弾。前作『破門』で二蝶会を破門になった元・若頭代行のイケイケヤクザ 桑原保彦(いちおう堅気)と、建設コンサルタントの二宮啓之の相性最悪コンビが、政治家とヤクザの金を巡るごたごたに巻き込まれて、文字通りシノギを削る快作。
今回の主な舞台は大阪北部。「北茨木市」はほぼ茨木市と読み替えてよく、茨木市で育った身としては親近感がわく(どこがや)。ヤクザも悪いが、議員と議員秘書がとにかく悪い。金に汚い。やることがえげつない。出てくるやつらことごとく狸!
不景気で閑古鳥の鳴く建設コンサルタントの二宮は、アメリカ村の事務所の同じビルに事務所を開いたという高校時代の同級生藤井あさみに頼まれて、同じく同級生だった長原の頼みを聞いて欲しいと言われる。今は国会議員の私設秘書をしているという長原とは、ほとんど接点はなかったが、藤井がちょっといい女なので鼻の下を伸ばしたばかりに、厄介な仕事を引き受けてしまう。何が厄介かといって、最終的に桑原を頼りにせざるを得ないという、二宮にとっては最悪のパターンだが、物語はここから動き始める(あたりまえ)。
破門されて組というバックボーンの無くなった桑原は、いちおう「堅気」を称してはいるものの、やることなすことヤクザそのもの。二宮は毎度生きた心地がしない目に遭いながらも、桑原の指図で動くしかない。桑原と二宮の大阪弁の生き生きとした遣り取りは、漫才のようでも落語のようでもあり、大阪弁ネイチャーなら苦も無く脳内で再生される。
ヤクザよりやることがえげつない政治家と議員秘書相手に桑原と二宮はどれだけ金を搾り取れるか!そして、桑原の組復縁は?
大阪府暴力団排除条例施行の折柄、ヤクザの「生きづらさ」も体感できる極道お仕事小説!夏の暑さも吹っ飛びますよ!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の小説
感想投稿日 : 2020年8月12日
読了日 : 2020年8月12日
本棚登録日 : 2020年8月12日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする