四畳半神話大系 森見登美彦 2020/12/14
大学生のうちに読んでおけ!という話はたくさん聞いていたが、ついぞ人よりも1年長かった大学生活の間に読むことがなかった。
でも、持っていたことは持っていたと思う。
大学生の僕はファッション感覚で本を買い、鞄に忍ばせ、あまり開くこともなくくしゃくしゃにしていた。
タイトルの感じと伝え聞く評判、中村佑介の表紙はそんな僕にぴったりだと感じていたのは覚えている。
だけど読んだ記憶はない。せいぜい冒頭の数ページを読んで、癖のある文章に嫌気がさして読むのをやめたのだろう。
「大学生なら〜」みたいな風潮があるとつい逆らいたくなってしまうひねくれた性分もあっただろう。あれだけヒットした『君の名は』やらなんやら、ヒットしているというだけで観る気を削がれていた。
最近、人生のたらればを考える事が多い。
失恋やら転職やらで精神が落ち着いていないのだろう、それは自覚しているが、あの時ああだったらなとかこうしていればなとか、犬も食わないような空想に逃げてしまう自分がいる。
この物語は平行世界とでもいうのか、”if”の世界を辿らせてくれる。でもどの世界線でも同じように退廃的だし、小津とは奇妙な友情関係を築くし、同じような悩みを抱えている。
そう、結局僕は僕なんだから、同じような「今」に落ち着くんだろう。
現実として”if”は(多分)存在しないんだから、今自分にできることをやるしかない。というか、「今」の自分を正しく認識して認めるのが大事なんじゃないか。
そう感じる一冊。
▶︎pick up
成就した恋ほど語るに値しないものはない。
「我々という存在を規定するのは、我々が持つ可能性ではなく、我々が持つ不可能性である」
- 感想投稿日 : 2021年6月14日
- 読了日 : 2021年5月10日
- 本棚登録日 : 2021年5月10日
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