モーパッサン短編集(一) (新潮文庫)

  • 新潮社 (1971年1月19日発売)
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■「牧歌」……ジェノヴァからマルセイユへ、海岸線をのんびりとひた走る汽車の車両の隅っこ。空と海の青。潮と汗の臭い。巨大でふわふわの乳房。その先端からほとばしる母乳の白さと甘さ……。
■「トワーヌ」……「トワーヌじいさん、でぶトワーヌ、わしが銘酒のトワーヌ、焼酎ことアントワーヌ・マシュブレ」が、寝たきりの熱っぽい体の腋の下で9個の鶏のたまごを温め、9羽のヒヨコが孵る。
■「ジュール叔父」……気の毒なひとにやさしい言葉を。そして幾ばくかの心づけを。
■「椅子なおしの女」……”ぼくも、これほど風変わりで哀切きわまる物語を聞いたことがありません――。”
■「クロシェート」……芳紀十七歳、紛うことなき美女、恋の殉教者、偉大な魂の持ち主であるクロシェートが、3階の窓から飛び降りて片足を3か所複雑骨折する。
■「未亡人」……老嬢の薬指に巻かれた色の褪せた金髪の由来とは――。傑作!
■「海上悲話」……トロール船の索具に腕が挟まって――。悲惨な経験をする弟の言動が超クール!
■「田舎娘のはなし」……身ごもったゆえに男に捨てられた哀れな田舎娘。不幸のどん底から、一転ハッピーエンドに! これも傑作!
■「田園悲話」……「子供を育てるために、こんな思いをするなんて!」 とびっきり悲しいお話。
■「ピエロ」……犬がいらなくなったら、泥炭採掘の竪穴の中にポイっ!――って、そんな無茶なぁ~。
■「幸福」……ひとりの老紳士が5年前のコルシカ島での経験を物語る。あまりにも単純、そして感動的な掌編。
■「帰郷」……「イノック・アーデン」。死んだとみなされていた漁師が12年ぶりに帰ってきた。これも単純だが非常に感動的。
■「木靴」……”枕を交わす”という日本語があるが、フランスの田舎では”木靴をごっちゃにする”というのだろうか?
■「旅路」……「たがいに氏素性をしらない男女の無言の恋」。実に感動的。
■「アマブルじいさん」……この短編集では自殺で決着する感動的な物語がいくつかあるが、アマブルじいさんのだけは”汚い自殺”だ。作者はこの、吝嗇、固陋なつんぼの老人をよほど嫌いだったのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 外国文学
感想投稿日 : 2020年5月10日
読了日 : 2020年5月10日
本棚登録日 : 2020年5月10日

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