ファウスト(一) (新潮文庫)

  • 新潮社 (1967年11月28日発売)
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あらゆる学問を修め、もはや現世で得ることもなく虚無感に襲われ自殺しようとしていたファウスト博士のもとに、黒い犬がやってくる。犬の正体は悪魔メフィストフェレス。ファウストは、この世の快楽と引き換えに死後魂を渡す契約を悪魔と交わす。魔女の薬で若返ったファウストは、マルガレーテという若い娘に早速一目惚れ。悪魔にもらった宝飾品をプレゼントしたりして彼女の心を掴みまんまと良い仲に。だが成り行きでマルガレーテの兄を殺害してしまう。何も知らないマルガレーテはやがて妊娠するが、ファウストはそれと知らず距離を取っており、悪魔とワルプルギスの宴に出かけたりしているうちにマルガレーテは未婚のまま出産、さらにその赤ん坊を殺した罪で投獄されてしまい…。

マイブーム悪魔につき超久々の再読。細部忘れていたけれど、意外なほどのファウストのクズ男っぷりに結構イライラ(笑)若返った途端に若い娘に入れあげ、そのくせ妊娠させて放置、彼女が一人で出産して投獄されるまで気づかないボンクラっぷり。いくら悪魔にそそのかされていたとはいえ、人としてダメすぎる。最終的にマルガレーテを救いに行きはするが(悪魔の手を借りて)、マルガレーテのほうはこれを拒否。すでに正気を失っているマルガレーテが不憫。この狂気の場面は、ハムレットのオフィーリアに匹敵する。本筋とあまり関係ないオベロンとタイターニアの金婚式の場面などは好き。

ファウスト伝説自体はゲーテの創作ではなく、15~16世紀にモデルとなった人物がいて伝説化したらしい。魔女狩りの時代、今でいう都市伝説に近いにおいがする。大好きなブルガーコフの『巨匠とマルガリーダ』も、ファウスト伝説が下敷き。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  ★ドイツ・中欧 他
感想投稿日 : 2023年6月29日
読了日 : -
本棚登録日 : 2012年11月1日

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