短編集。「ずっとむかし、ぼくたちはみんな、誰かが書いたお話の中に住んでいて、ほんとうは存在しないのだ、といううわさが流れた」という書き出しで始まる表題作は童話や物語の登場人物たちが住む世界での話。浦島太郎や赤ずきんのオオカミ、そしてピグレットやティガーたち、どんどん消えてゆくキャラクターたちが切ない。最後に誰が残ったかはタイトルから察して。
「峠の我が家」もこれに通じる話で、こちらはイマジナリィ・フレンドたちの住む家。イマジナリィ・フレンドは、きわめて個人的なお友達だから皆が知ってる物語の登場人物とは違うけれど、それはただ彼らが物語に書かれなかったというだけで、存在の在り方としては大差ない。人々に忘れ去られたときに彼らはやっぱり消えてゆく。
おなじみランちゃんとおとうさんの「お伽草紙」、死んだひとが蘇ってくる「ダウンタウンへ繰り出そう」も良かったけれど、ラストの「アトム」がとても辛かった。鉄腕アトムとクローンのトビオのアナザーストーリー。最近読んでとても気に入った『銀河鉄道の彼方に』と繋がっている世界観だった。
※収録作品
さよならクリストファー・ロビン/峠の我が家/星降る夜に/お伽草紙/ダウンタウンへ繰り出そう/アトム
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
○高橋源一郎
- 感想投稿日 : 2017年9月11日
- 読了日 : 2017年9月10日
- 本棚登録日 : 2017年8月30日
みんなの感想をみる