14世紀、ペストの大流行で死の都と化したフィレンツェ。難を逃れた上流階級の男女10人(女7男3)が郊外の別荘で語った、10日間×10人(1日各1話)=全100話の物語。河出文庫で上中下巻、出揃ってから取りかかろうかとも思ったけれど、続きものの長編というわけではないので、とりあえず出た分から。上巻は10人が集まるまでの経緯と、3日目までの30話分を収録。
序盤は真面目な教訓ものっぽい話もあったのに、進むにつれてどんどんエロネタが増えていって、結果なんかもう全部オチはそれ、みたいになっちゃってて笑えます。イタリア人は陽気で恋愛体質、というのは先入観かもしれないけれど、ゲス不倫だろうが無理強いだろうが騙し合いだろうが基本男女間のあれこれに関してはとてもおおらか。浮舟(※源氏物語)だったら身投げするような事態が起こっても、最終的にはそっちのほうが良くなっちゃったり、こと性欲に関してとても明るくて前向き。あと聖職者(尼僧含む)に関しては特に欲求不満で好色な感じで描かれており、これは一種皮肉でもあったのかな。
この巻で一番インパクトがあったのは第二日第七話。美人すぎるお姫様がその美貌ゆえに、嫁入りの途次で攫われて奪われたのを発端に→別の男が彼女に目をつける→前の男を殺して新しい男が彼女を手に入れる→また別の男が現れて前の男を殺し彼女を手に入れる→というのが延々続き、最終的に、四年のあいだに「八人の男とおよそ一万回ほど共寝した姫」となってしまうわけですが、彼女の凄いところは毎回、前の男を殺されて別の男に連れ去らつつ、その都度なんやかんやで新しい男で満足してしまい、けして少女マンガのヒロインのように「初恋のあのひとが忘れられない、別の男に抱かれるくらいなら舌を噛んで死んじゃう!」みたいなことにはならないところ。それにしても4年で1万回は無理ではないかと思うのですが(苦笑)このような辛酸を辛酸とも思わず前向きに乗り越えたお姫様は無事生還し、処女のふりをしてしっかり他国の王様に嫁入りしましたとさ、というすごい話。たくましい。
- 感想投稿日 : 2017年3月21日
- 読了日 : 2017年3月20日
- 本棚登録日 : 2017年3月10日
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