東方綺譚 (白水Uブックス 69)

  • 白水社 (1984年12月1日発売)
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本棚登録 : 525
感想 : 47
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ユルスナールは三島について書かれた本しか読んだことがなくて、小説は初めてです。ヨーロッパから見た「東方」の範囲は結構広いみたいで、日本、中国、インド、ギリシャその他、あちらからみて「オリエンタル」な匂いのする国々が舞台になった短編集。各地の伝説や神話がモチーフにされていることもあって幻想的な話が多く、寝る前に1編づつ読むのが毎夜楽しみでした。

好きだったのは、いかにも中国の伝説系にありそうな「老絵師の行方」。絵の中の海に舟で漕ぎ出してゆくラストの美しさはとりわけ印象的。インド神話やヒンドゥ教の女神の説話を元にした「斬首されたカーリ女神」も、神話らしいエピソードで好きだったなあ。「死者の乳」は、日本の昔話にある「子育て幽霊」をちょっと思い出しました。国は違ってもこういう逸話には不思議と共通点があったりするのって面白いですよね。

「燕の聖母」は、ファンタジー色の濃いところは好きなんだけど、キリスト教って布教の過程で土着の神様を否定してどんどん迫害していったでしょ、あのやり口が大嫌いなので、途中までちょっとイラっとしたものの(苦笑)、最終的に聖母様はとても寛大だったのでハッピーエンドになり良かったです(笑)。

日本が舞台の「源氏の君の最後の恋」は、タイトル通りかの光源氏の最後の恋のエピソード(もちろん創作)ですが、日本人でさえ源氏物語を全部読んだ、登場人物はすべて把握している、という人は少数派だと思うので(かくいう私も基本知識は「あさきゆめみし」です・笑)、ユルスナールが源氏物語を知っているというだけでも十分な驚きだし、多少の間違いはまあご愛嬌ですよね。そこは逆に翻訳者の機転が利いていて、非常に読みやすかったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  ★フランス 他
感想投稿日 : 2013年3月22日
読了日 : 2013年3月21日
本棚登録日 : 2013年3月11日

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