大地(四) (新潮文庫)

  • 新潮社 (1954年3月29日発売)
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感想 : 51
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第三巻以降は主に王淵の物語。王龍の三男王虎の長男である王淵が軍閥将軍王虎の愛児として、その偏った愛に縛られて成長していく過程とその心の葛藤を描いている。その時代の男女関係、結婚感から革命軍、軍閥、海外との関係など当時の中国の風景が小説家の観点から壮大に描かれているのだ。

時代背景も色濃く影響を及ぼしているとは思うが、王淵の性格は本当にややこしい。そこが新時代の人間であり、当時の中国の何かを体現しているのかもしれない。特にその女性観は頑なではあるものの青春の男性が持つ葛藤を好く描いているともいえる。

振り返ってみると、大地は女性観の変遷でもある。奴隷を譲り受け、出産して翌日から働くことから、妾をとること、そして新時代の女性感、これは逆に針が振れ過ぎている部分もある。アメリカの女性との付き合い方と王淵が心を寄せる女性との考察など全編を通じて、当時の中国男性の女性観を大いに描いているともいえるのだ。

「大地」というタイトル(原題は'The good earth')は後半に従って、具体的な土から、愛する国といった概念に昇華していくが、大地に根差す人々の息遣いという観点では、もう一つの柱であることは間違いない。

その地政学的な時代性を感じ取るにはまたとない書籍で、読破後の感慨もひとしおである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年1月27日
読了日 : 2020年1月27日
本棚登録日 : 2020年1月2日

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