青ノ果テ :花巻農芸高校地学部の夏 (新潮文庫 い 123-2 nex)

著者 :
  • 新潮社 (2020年1月27日発売)
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東京から転校生が来て、幼馴染みが姿を消した。
そして、壮多は転校生と先輩と三人で宮沢賢治ゆかりの地を巡る自転車旅に出る。【イーハトーブ】を探すために。

宮沢賢治を追いかけて花巻に行ったときのことを懐かしく思い出しながら読んだ。

伊与原さんの作品は『八月の銀の雪』に続いて2作目ですが、今回も地学の知識がすごい!賢治作品を読んでいると、これらをきちんと読むには地学の知識も必要だなと思わされるので、天体の話や鉱物の話がたくさん出てくるのは宮沢賢治を軸にする上で必然かな、と。その知識も細かすぎるとストーリーが入ってこなくなっちゃうけれど、程よく丁寧に解説されているから、流れを見失わずに読めた。
そして基本的にずっと穏やかな感じが続く。七夏がいなくなってしまったり、深澤への不信感があったりはするけれど、悪い人が出てこないからか?ちょこちょこと事件が起きてもザワザワしないで落ち着いていられた。

第3次稿を「カムパネルラの死なない世界」として、物語の中でうまく使っているのはなるほど。たしかに第3次稿はカムパネルラの死がはっきり描かれているわけではないね。
ジョバンニの子ども、カムパネルラの子ども、ザネリの子ども、という当てはめ方もおもしろいなと思った。

それにしても・・・青春だなぁ・・・という感じ。
【青ノ果テ】の青って【青春】の青?みたいな・・・


「三人もまた、流れていくのだろう。この川の水ように、ときに分かれ、また合流しながら、見たことのない景色をいくつも見て、繰り返す季節をいくつも経る。そしていつか、今は想像もできないような場所にたどりつくのだ」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年5月7日
読了日 : 2022年5月7日
本棚登録日 : 2022年3月5日

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