不幸な国の幸福論 (集英社新書)

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  • 集英社 (2009年12月16日発売)
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感想 : 87
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"知り合いから紹介された本。日本の現状を様々なデータも交えながら、的確に言い得ている。知り合いの方も言っていたが、著者の加賀乙彦さんとほぼ同じ風に世の中を見ていたので、ある意味痛快だった。
不幸な国とは、我が国日本。日本は社会、仕組み、共同体として不幸を生産している。そんな国に生きる人間の幸福とはなんなのか?という問いかけをしているのが本書である。刺激を受けた部分をメモしておく。

第一章 幸福を阻む考え方・生き方
「見られる自分」に対する意識の強さと「悩み抜く力」の欠如

「悩み抜く力」の欠如=「考えずに受け入れる」ことが当たり前になった
つまり、
・新しい技術で生み出された文明の利器をただ享受するだけになった
・テレビ、電卓、PCなど普及し、自分の頭で考え抜くことをしなくなった
そして、
・自分にマイナスのレッテルを貼る=他者との比較でのみ自分の価値を見る(子供の自尊心)
(長所、短所丸抱えで、ありのままの自分の現状を知った上で、
 今の自分より成長をしたいと願い努力するのが大人の自尊心)
 その原因は、過保護、過干渉で子供に過剰な期待をかける親の存在。
 子供が傷つかないよう、失敗しないように世話を焼き、あるがままを受け止めず誰かとの比較で○×をつける。
 社会も同様、「足の遅い子が傷つくから、平等に」などで、運動会で順位をつけるのをやめておきながら、偏差値という物差しだけで子供をはかり競争させる。

「見られる自分」に対する意識の強さ=個を育てない教育(家庭~学校)
つまり、
・幼いころから、子供の秘密を暴く親が多い(子供を異なる人格を持つ人間として認められない)
 →子供の自我確立を妨げる
・そして、人目を気にする国民ができあがる。(フランスは、人と同じことで悩む)

第二章 「不幸増幅装置」ニッポンをつくったもの
経済的疲弊が自殺に直結する国は日本のみ。
GDPに占める社会保障の割合は、17.7%(OECD加盟国中23/29位)
GDPに占める公共事業の割合は、1970年代初頭から最近まで先進国中トップ
NY Times「日本の破産への道は公共事業によって舗装されている」1997.3.1
流されやすい国民。
1.好奇心旺盛、2.「個」を主張しにくい社会、3.「考えない」の習慣化

第三章 幸福は「しなやか」な生に宿る
1943年 ラインホールド・ニーバー牧師の言葉(マサチューセッツ州にて)
 神よ、私たちにお与え下さい。
 変えることのできないものを受け入れる冷静さと、
 変えることのできるものを変える勇気を。
 そして、2つを見分ける知恵を。

第四章 幸せに生きるための「老い」と「死」
死と向き合うことで、生を見つめ直し、老いを楽しむ。"

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会学
感想投稿日 : 2018年10月19日
読了日 : 2018年10月19日
本棚登録日 : 2018年10月19日

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