向島なずな屋は、花師として品種改良や庭造りの確かな技を持つ新次と、おりんの夫婦が営む苗物屋。
花木の良さはもちろん、手習の師匠をしていたおりんが書き添えるお手入れ指南の添え書きが評判だ。
江戸一番の花師を選ぶ“花競べ”、新次の師匠の娘で優れた花師でもあった理世との再会、預かった少年との心の通い合い…と、さまざまな物語が語られる連作短編集。
朝井まかてさんの、これがデビュー作とのこと。
うーん、デビュー作とは思えない。
花師という仕事を通して描く江戸の風俗は、火事と喧嘩ではない、花々に彩られたガーデニングブーム。
ムラサキシキブやソメイヨシノの名付けにまつわる物語も興味深い。
親の勧める縁談を拒み自立しようとしたおりん、名家の娘ながら花師として成長しようとする理世など、個性的で自立しようとする女性の姿も、デビュー時から大切な視点だったんだなぁ、と。
新次と理世が、一夜限りと決めていたにしても、あっさり契りを結んでしまうエピソードが、ちと意外。
最近はそうでもないけれど、少し昔は時代小説とハリウッド映画には、必ず色っぽいシーンを入れなきゃいけない決まりでもあるのかと思っていた。
その時代のデビュー作品なのかな。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
時代もの・平安〜江戸
- 感想投稿日 : 2021年9月26日
- 読了日 : 2021年9月21日
- 本棚登録日 : 2021年9月22日
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