「たらし」の家と蔑まれる反面、確かな造園技術で地元では知られた曽我造園の三代目・雅雪。
全身に大火傷の跡、不自由な身体、祖父から受け継いだ若白髪の髪。
雅雪は、両親を亡くした少年・遼平の面倒を見続けながら、ひたすらに「その日」を待っている。
その日まで、あと数日というところから物語は始まる。
肉親から関心を持ってもらえず、自身も肉親への情を知らずに育った雅雪。
母親からの過剰な関心を寄せられ、バイオリンを弾く事だけを求められてきた郁也。
郁也の双子の姉でありながら、郁也に全ての関心を注ぐ母親に無視され、家政婦のように扱われてきた舞子。
雅雪の父母、祖父、そして郁也と舞子の母もまた、人としての情の欠けた大人達。
そんな人々が交錯し、愛が生まれ、愛ゆえの悲劇が起きる。
遠田潤子作品の、どうしようもない力に惹かれつつ、昏い人間関係の描写が辛くて…
しばらく離れていたけれど、本作には、最悪の傷と、最上の救いがある。
あまりにも深く傷つき、結びついた心。
すぐそばにいて伝わる心もあり、離れてやっと受け入れられる心もあるのだろう。
ラストのおだやかな暖かさ。
雅雪、舞子、遼平の誰もが、いつか傷つけ合わずに暖めあう距離を見つけられますように。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
国内作家
- 感想投稿日 : 2018年1月7日
- 読了日 : 2017年12月27日
- 本棚登録日 : 2014年3月23日
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