ローマ人の物語 (23) 危機と克服(下) (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2005年9月28日発売)
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歴史家ギボンは、
「ローマがなぜ滅亡したのかと問うよりも、ローマがなぜあれほども長く存続できたのかを問うべきである」と言った。

1000年存続したローマ帝国。
それは、
「ローマ人が他民族を支配するのではなく、他民族までローマ人にしてしまったから」である。

結局、
ローマは最後まで属州の反乱では崩壊しなかった。

また、
学校で教えるローマ史では、蛮族の侵入によって滅亡したような印象を与えるが、これは完全な誤解だと著者は言う。

ローマが再び蛮族に蹂躙されるのは、防衛システムが機能しなくなったからだった。故に機能していた東ローマ帝国は崩壊を免れている。

「敗者になりたくなければ、防衛努力を忘れるわけにはいかない。」

ローマ人は平和協定を結んだ相手に対しても自衛努力を怠らないことは、矛盾どころか当然のことと考えてもいた。



「有権者ならば誰でも国政への判断力をそなえていると思うのは、人間性に対する幻想である。」

選挙というのも素晴らしい人を選ぶ作業ではなく、なるだけマシな人間を選ぶということなのだろう。




この時期に書かれた、
その先1000年わたって読まれ続けてきた「教育論大全」

そこにある教育通年は、
「教育とは、放っておいても一人で育つ天才のためにあるのではなく、社会全般の知力の向上が目的である」する考え。

これも非常に鋭い指摘で面白い。
現代のシンガポールのそれとはまた違うようだ。
シンガポールではエリートを選抜して官僚を育てていくための、敗者復活戦なしの教育システムを構築している。

教育の必要性の背景によって、
教育のあり方も時代と場所によって変わると考えられる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年4月21日
読了日 : 2020年4月10日
本棚登録日 : 2020年4月10日

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