中島敦『山月記』、芥川龍之介『藪の中』、太宰治『走れメロス』、坂口安吾『桜の森の満開の下』、森鴎外『百物語』という名作文学5篇を下敷きに……「アレンジ」、「リライト」、「本歌取り」、「換骨奪胎」、「翻案」、「パロディ」……いろんな言い方があると思いますが、千野帽子氏が巻末の解説(これまた夏目漱石『夢十夜』を下敷きにした手の込んだもの)で使っていた「再起動(リブート)」という表現が、僕はとても好きです。なんと言っても勢いがある。 何しろ森見氏は名作5篇全部を仮想京都の自堕落大学生の話にしてしまったわけですから。若さと、それゆえのお馬鹿と自意識過剰と屁理屈のエネルギーがみなぎる連作短編集でした。
なかでも『走れメロス』の暴走っぷりはすごかった。原作では親友のところに戻る救出劇だったのが、森見版では親友のところから離れる逃亡劇に反転。オチは秀逸!
その次に置かれた『桜の森の満開の下』に漂う寂しさは、胸にじんときました。
ところで、祥伝社文庫版も持ってたはずなんだけど、どこにいっちゃったんだろう? 記憶違いかな……?
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- 感想投稿日 : 2022年9月7日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2017年8月18日
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