蜘蛛の糸

著者 :
  • 2012年9月27日発売
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本棚登録 : 880
感想 : 85
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読まずにいた名作その1、まさか10分ほどで読み終わるとは思わなかった。気になった点は二つ。
一つ、蜘蛛を助けたくらいでその他の罪を赦して極楽に来てもいいと思えるお釈迦様の心の広さが不自然。
これはやはりお釈迦様だから、に尽きるのだろう。しかしこの大らかさは、情状酌量や恩赦にもつながる。要は、本人が罪を犯してしまったらそれだけでもう裁かれる対象なのではなく、他の要素からも多面的に見るべきだということ。合理的に見えるもののみを評価対象にするだけでは人は裁けないのだ。
一つ、カンダタは他の人にも情けをかければ助かったのか。
こちらも難しい。正直蜘蛛の糸に他の人が登って来たらやめてくれと言いたくなるものだ。しかし、これは偶々カンダタの所に降りて来た蜘蛛の糸なのだから、他の人が後続として登ってくるのも無理はない。お釈迦様はここで更にカンダタを見極めようとしていたのだ。蜘蛛の命を助けたのに、地獄では周りの命を重んじなかったためにお釈迦様はガッカリされたのかもしれない。一度くらいの善行では救わないなんて上げて落とすのがお上手ですね。
こう考えると、一つ目の話にも納得がいく。ただでは助けてはいないのだ。どんな状況でも他者を大切にできるならば救ってあげてもいいよくらいのスタンプだったのか。こういう寓話はいくらでも考えが及ぶので楽しい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年10月24日
読了日 : 2019年10月24日
本棚登録日 : 2019年10月24日

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