架空の街を舞台にした群像劇。全ての話に重要であれ端役であれオリーヴ・キタリッジが関わってくる。
こういう語り口はすごく好きだ。話ごとに少しずつ時間は進み、他人の口から、または本人の口からオリーヴがどのような生活をしているのか知ることができる。
架空の街のピーピング・トムになった気分。あるいはやたら近所の事情に詳しいおばちゃん。
一篇一篇は独立した物語で、主人公も、それぞれ抱えている悩みも違うが、寂れた港町ではどうしても恋愛スキャンダルや死が話題に上りがちになる。オリーヴが生命力に溢れた女性なのに対し、周囲は死の話が多い。最後にはオリーヴすらその死に巻き込まれそうになってしまっていた。
それでも、信仰が薄れ、死が決して救いではなくなった世界で作者が描きたかったものは生への讃歌かと、勝手に思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
連作短編
- 感想投稿日 : 2018年5月5日
- 読了日 : 2018年5月5日
- 本棚登録日 : 2018年5月5日
みんなの感想をみる