マレーの虎ハリマオ伝説 (文春文庫 な 23-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (1994年7月1日発売)
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感想 : 5
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古本屋で見かけてそういえば名前だけは知っているハリマオって…?と思い購入しました。

自分の世代ではハリマオの紙芝居や映画、漫画もリアルタイムではないので名前だけ知っているヒーローの実像ってこういう人だったんだ、と言う感想でした。
ただハリマオと言うよりは戦前の日本での帰国子女は想像に絶する苦労をしただろうな、と言うことは理解できました。

著者が日本人としての自覚云々を作中かかれておりましたが私は海外に行って始めて自分が日本人だということを自覚したように思います。日本国内にいたらそれほど自分のアイデンティティと言うものを実感しなかっただろうなと思うのです。
異国にいればどうしても外国人な自分をいやでも毎日、24時間とは言いませんが異文化と接するとき自覚する訳なのでそれじゃあ日本ってなんぞや?と思ったりするわけです。そんなわけで今では大分鈍感になってしまっておりますが日本文化に対する自分の無知さ加減に恥ずかしいなあと思うことだらけです。

勿論、ハリマオが同じことを考えていたとは思いません。作者も一方的にハリマオの心情を想像するのではなくもう少し裏づけがあればな、と思いました。取材が谷豊氏がその人生の半分も過ごしていない日本側からだけでマレーや現地の方の取材がなく作者の想像だけなのはそれこそ異文化を理解する能力に欠けている、と作中かかれていた戦時中の日本と同じアプローチなのでは?と思いました。

そんなわけで最終章はちょっと自分的には…?でした。ろくに取材も下準備もなく海外に行ってハリマオが居た頃のマレーやシンガポールはどうだったろう?と思うだけならば普通の観光客でもできたのではないかと。今まで取材を重ねられて来た方なのだからもう少し何か…と思うのは期待をかけすぎでしょうか?
そしてできれば地図や写真を入れてほしかったかな、とも思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2009年12月3日
読了日 : 2009年12月3日
本棚登録日 : 2009年12月3日

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