誰をも少し好きになる日 眼めくり忘備録

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  • 文藝春秋 (2015年2月23日発売)
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感想 : 11
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一番印象に残ったのは、たくさん衣装を持ったお姐さんこと「浅草のジェルソミーナ」、そして番外編として再び登場する「一番多く写真を撮らせてもらったひと」のさくらさんだ。
浅草寺の境内にある歌碑の近くに一人佇む年老いた娼婦を、なんと20年以上も同じ構図、同じ場所、同じ光で撮りつづけ、短いセンテンスを繋げて淡々と書かれた文章には、侮蔑やいやらしさや好奇の目線が全く感じられず、むしろやさしさを感じる。
最後に言葉を交わした(熱い缶コーヒーをカイロ代わりに2本差し入れした)冬の寒い日から、路上に誂えた小さな祭壇に手を合わせる数日までの動揺ぶりが、単に被写体としての存在以上の想いが滲み出ていて、鬼海さんが抱き続ける「人間とは何だろう」という問いかけがこちらにも伝わってくる。

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感想投稿日 : 2023年3月25日
本棚登録日 : 2023年3月4日

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