老子・荘子 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 (角川ソフィア文庫 124 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)
- KADOKAWA (2004年12月25日発売)
技術、知識に捕らわれない、もう一歩進んだ価値観を持つために必読の書です。
論語、中庸、大学と、孔子に連なる本を読んでいたところ、友人から「バランスを取るために老子も読んでおいた方がいい」と薦められました。
読んでみて納得です。
万物斉同(すべてのものはすべて1つである)という万物一元論を基に、孔子の考え方を「表層的」と暗に批判する姿勢に、孔子との違いを比較せずにはいられませんでした。
孔子が唯一であるよりも、比較対象があってこそお互いの意見にもっと寄り添うことができます。孔子が現実的、具体的であるとすれば、老子は、非現実的、抽象的です。そして、現実的である孔子の言を以て、まだ浅いと指摘しているのです。
どちらが良いか?と言われると、迷います。
老子、荘子の言葉がより深遠に読み取れますが、深すぎて、明日の仕事に換言できません。
孔子が説く、恕(「じょ」:思いやりの心)や、富国、楽しむ力の方が、より自分の生活に言い換える事ができます。
孔子の言葉が25メートルプールで泳ぐ助言だとすると、
老子はの哲学は潜水専用プールで役立つヒントのようです。
深い、万人に通じるイデアだけれど、万人の理解は難しい。泳ぐというよりは、思考を深く潜る意識が必要でした。
最後に、印象的な言葉を3つほど引用させてください。
・無用の用
ソクラテスの無知の知を彷彿とさせる、常識を覆すような言葉。
・無為にして民自ら化す
トップダウンであれこれ言うと、民衆は反発する。無理な改革、新技術のおしつけをやめれば、おのずから人は変わる。
・足るを知るの足るは、常に足る
満足していることを知っている人は、常に満足できる。
最後の一文は自分の座右の銘だったのですが、実は語源を知りませんでした。
こういう出会いがあるから古典は辞められません。
論語と同じく、「早く読んでおけば良かった」と思える1冊です。
2021年ベストブック認定です。
- 感想投稿日 : 2021年12月26日
- 読了日 : 2021年12月26日
- 本棚登録日 : 2021年12月26日
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