できるだけ同じ作家の本は作風に偏見を持ってしまわぬよう3冊は読むようにしている
というわけで芥川3冊目
芥川作品王朝モノ
■羅生門
ぜんぜん記憶に残ってない…
読み終わってやっと、確かにそんな話だったなぁ…と薄らぼんやり
この下人の変わり身の早さにはおかしみを感じると同時にどうしようもない人間臭さに妙に納得してしまうのだ
だからこの悪事を不思議と憎めないのだ
髪の長い女の屍骸の髪を抜く老婆に激しい憎悪を抱く
これも偽りのない感情であろう…
しかし子供が読むには怖い気がする
死体の髪をむしる婆さんだけでも恐ろしいのに、下人の豹変には肝を冷やすんじゃないのかなぁ
■芋粥
途中まであまりにもうだつの上がらない、かつ煮え切らない五位にうんざりし、読む気が失せそうに…
滑稽過ぎなのだ
が、芋粥はあまりに美味しそうだし、あれほど熱望したのにいざとなったらちょっとしか食べられない…とか
わかるなぁ
ま、何事も分相応ですな
そんな横で立派にお使いをした狐が芋粥食べちゃう
なんだかおかしな構図で最後はクスっとしてしまう
■袈裟と盛遠
盛遠は鎌倉時代の文覚上人の俗名である
文覚出家前のお話
ちなみに「鎌倉殿の13人」では市川猿之助が悪目立ちして演じておられる(笑)
これは楽しめた
前半は盛遠の独白
後半は袈裟の独白
昼ドラのようなストーリー
〜あの人は来るのかしら
〜今夜私を殺しに来るのだ
何とも陳腐なセリフなのにニヤけてしまう
これぞ悲劇と喜劇の極み(喜劇が勝つのだ)
これは恋愛ではなく、恋愛の悲哀に転換させた人間のエゴだなぁ
勝手に自分の落とし所を自分の理屈で持っていく
そして、二人共が…ってのが面白い
■邪宗門
なんと未完の作品
ええええー
電車で声を上げそうになった!
こんな良いところで⁉︎
「地獄変」とかなり被る登場人物たち
懐かしいっ!
(しかし堀川の大殿様はやっぱり嫌なヤツじゃん
語り手も同じ人物らしいけど、地獄変ほど褒めてないわねぇ 今回若殿様を結構持ち上げてますが、こちらもなかなかしたたかな方とお見受けしますけど…そしてあの絵師の良秀もチラリと登場 ああ、娘の乗った燃えしきる車を思い出す)
異教の怪しくて強い摩利信乃法師が大暴れ
横川の僧都さえも負けてしまう
そこへ若殿様が登場…
終わり( ̄◇ ̄;)
全て中途半端で意味深で…気になりすぎる
大殿の若殿親子の執拗な比較は何か意味あるの?
とか
摩利信乃法師と姫様の関係は?
とか
もちろん
摩利信乃法師と若殿の決着は?
とか
気になるじゃあありませんか!
冒頭に若殿様の生涯でたった一度の不思議な出来事…とあるからきっとこの事なんだろうけど…
うー
残念だぁ
■好色
平中(平貞文)の驚愕のお話…
平家の三人兄弟の真ん中というのが名前の由来
雑過ぎますがな
兎にも角にも色好みのそしてなかなかのイケメンらしい
平中が今とってもお気に入りなのは、とある侍従
どんな女性も落とせる!と自信満々の平中が、手こずっている
文を送っても送っても返事を寄越さない
せめて「見つ(文を見た)」とひと言だけでも…と切望すると、平中の文のこの二文字を切り取って貼り付けた文を送り返す(笑)
他にも手を変え、猛アタックするものの、侍従はのらりくらりと賢くかわし続ける
とうとう送った文は60通に…
平中はプライドはズタボロ、侍従を諦めようと何度も思うが無理…
そしてもう発狂寸前
こうなったらあの女の浅ましい所をみつけることだ!と決意
そして極めつけの最後の事件が…
ちなみにこの章タイトルは
「まりも美しとなげく男」
わかります?
「まり」…
まり…
まり…
漢字にしましょう
糞
すみません
※この先は下ネタだめな方や、お食事中、お食事前の方はご注意くださいませ
そうとうとう侍従のまり(糞)の入った箱(便器)を女の童が運んでいたところ、その箱を横取りする
この中を見れば百年の恋もさめるはずだと…
そしていざオープンΣ(゚д゚lll)
んん?
あれ?
おかしい
そんな馬鹿な…
薄い香水に濃い香色の物が二つ三つ沈んでいる!
平中は何度も髭にも触れるほど匂いを嗅ぎ、水をすすってみる∑(゚Д゚)
……
丁子(香木)の香がたちこめ、よくよく見れば香細工の糞を作ったのだ
恐るべし侍従…
何枚も上手過ぎる侍従に身も心もやられてしまい、とうとう平中は死んでしまうのだ…
キョーレツ極まりないんだけど、最後切ないのよ…ええ
これは喜劇のはずか悲劇が最後に勝ってしまった珍しいパターン
はぁ色々な意味でドキドキが止まらない…
■俊寛
平家打倒の陰謀に加担したとされ、鬼界が島に流された僧、俊寛のお話
同じく流刑にあった他の面々には恩赦がおり、迎えの船が来るか、俊寛はひとり残される
しかし出来た男なのだ
居心地は悪くない
やかましい女房に小言を言われることもない
そうカラッと島に会いにきた有王に語る
俊寛に仕える主人の悲運を嘆き泣いてばかりいる有王に
何よりまず笑う顔を学べ
と教える
有王は都に帰らず、俊寛の御側勤めをするというが、俊寛はそんなことしたら娘に誰が便りを届けるのだと反対する
粋な男なのだ
無粋なワタクシはどんなオチがあるのかと、探り探り読み進めたが、こちらはそういうゲスの勘繰りの要らない誠に出来た僧侶の話
他、「鼻」、「運」
匂い立つような季節の移り変わりの描写は本当にお見事で、日本の古き良き情緒にはんなり
〜橘花の匂と時鳥の声とが雨もよいの空を想わせる…
〜御池の水に、さわやかな星の光が落ちて、まだ散り残った藤の匂がかすかに漂ってくるような夜…
今昔物語はもちろん
平家物語、源平盛衰記、宇治拾遺物語など
そろそろ読んでおかなくては…
そろそろ…
- 感想投稿日 : 2022年5月12日
- 読了日 : 2022年5月10日
- 本棚登録日 : 2022年5月8日
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