「百年の孤独」でノックアウトされた
凄すぎてしばらく立ち直れなかった
何からなのだろう?
そう百年の孤独がヒタヒタと自分の中に染み込んでいくのを感じ、その黒い影に呑み込まれた
だが、非常に面白かったのだ
と同時に面倒なものまで引き込んでしまって、しばらくガルシアマルケスと距離を置きたかったのだ
なんだか素手で心臓を触られてしまったような何ともいえない体感だったのだ
でもわかっていた
またこの世界にぜったいに戻りたくなることを…
こちらはうって変わって構成の不思議さに引き込まれる作品だ
とある閉鎖的な田舎町
ここで殺人が起こるのだが、誰が殺され、犯人が誰か…ぜんぶ先に予告されている
どういうこっちゃ?と読み進めていけばミステリーではないものの、
「?」を追い、納得していくパズル感はしっかりある
全ての核心と殺人事件が中央にあるとすれば、円を描きながら中央に向かってジワジワ進むカタツムリ型迷路みたいな感じだろうか?
語り手である「わたし」が調書や聞き込み、噂を元に30年前の事件の全貌を解明していくという設定になっている
そしてこの「わたし」は殺された男の友人であり、殺した加害者側の親戚でもある
(なんて言ったって狭い町ですから)
この微妙な立場の「わたし」が語るという設定も見せ物だ
閉鎖的な共同体に新しいよそ者が加わり、歯車が狂いだす
なぜ予告殺人を食い止められなかったのか
なぜ殺人が起きたのか
理由が明らかになるにつれ、一気に物語が動き出す
周りだって焦りだす
が、あれよあれよとその時が迫るのだ
そしてクライマックス!
時間が行き来し、マルケスの「マジックレアリズム」が幻想的に土埃に乗せて揺らめく
そしてユーモア
死体解剖シーンなんか笑わずにはいられない(シリアスな場面なのに)
何を大切にし、何を守っているのか
なぜ殺人は食い止められなかったのか
閉鎖的な町の破滅は象徴的であり、多くのことを示唆する
構成の凄さに目を奪われがちだが、結構人の心理の深さを突いている作品だ
しかし一体この人(マルケス)の頭の中はどうなっているのだろう
自由と拘束、陽と陰、冷酷さと愛情深さ、楽天的と悲観的…
あらゆる相反するものが表裏一体となってマーブルに混ざりつつ展開していく
だからなのかなぁ
読了後の感覚が何とも言えない
面白かったのに切ないし、なるほど!と思いつつなぜだろう?とモヤつくし…
こちらも同じく相反する気持ちであふれてしまうのだ
そして大好きなラテンママがここにもいた!
「わたし」のお母さん
マルケスの物語には必須アイテムといえよう
彼女たちがどれほど読者を救ってくれるか…
(救われないといけないくらいの気持ちにもなるんだよなぁ)
- 感想投稿日 : 2023年8月4日
- 読了日 : 2023年7月29日
- 本棚登録日 : 2023年7月29日
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