スターリン批判、権力構造批判、風刺文学、寓話形式…
と評される作品である
また、スターリン批判がモロバレとのことで、当時のイギリスで出版がなかなか出来なかった経緯があとがきにある
そういった時代背景をよく知ると、さらに理解が深まる
注)ネタバレ有
農場で家畜として飼われていた動物達が、人間の支配から脱却するために農場主を追い出し、全ての動物は平等だ!と…民主主義のような動物主義の始まり
みんな奴隷解放だぁと大喜び
全ては自分たちのものなのだ
平等で平和を目指すのだ
はじまりは、児童書や絵本のような明るい未来示唆するような展開
事前に内容を知らなかったら、そのまま幸せな展開が続くのかと思わせる
実際、始めは勝利に酔い、平和で楽しい日々が続く
「七戒」という動物主義主義の原理を7つの戒律に定め、変更不能な法とし、法と秩序のようなものが生まれる
動物の中で優れた知識を持つブタたちが指導者的地位につくのが自然の流れとなる
しかしブタたちは労働的な仕事は一切しない
徐々に、いつも食糧が足りず、過酷な労働が待ち受ける日々となる
動物達は不満を抱きながらも、それでも人間から解放された喜びの大きさを考えれば、やはり今のが幸せだし、前の生活なんか戻りたくない!
と思うのであった
気づくと、ブタたちが動物農場を当たり前のように仕切るようになる
他の動物たちがまともに字が読めないのを良いことに、戒律も解釈も自分達の都合の良いよう、自分達を守るよう少しずつ変えている
さらにブタの中で独裁者が生まれる
他の動物たちは何か違和感を感じたり、おかしい気がするものの、根本を探ろうとしない
一生懸命働けば良いことがあると信じたり、少し声をあげても強く言いくるめられると、何故か納得してしまう
狡賢いブタ達は、他の動物達を徐々に洗脳していく
社会主義のはずが独裁主義に変わり果ててしまう
結局本書は最後まで解決方法は生まれない
こここそが重要なポイントだ
独裁者が現れた時、何も発言をしなかったり、何か術を見つけず目を瞑ったら、簡単な操られる
簡単に洗脳される
ブタ以外の動物たちは、まさに我々なのだ
だから、一人一人が考えろ…と
そう、この答えを与えない終わり方
考えろ
考えないとこうなるのだ
声を上げろ
上げない世界を知りたまえ
社会主義から始まる独裁者を生み出しやすい思想の危うさと、声をあげない民主主義のリスクが浮き彫りになっている
どうしたら良いかなんて、誰かが答えを出してくれることじゃないのだ
決して押し付けがましくないやり方で我々に訴えかけてくる
そして答えもない
非常に効果的な作品であり、各自が考えるための読みやすい良書である
素晴らしい
ただただ、読むべし!
- 感想投稿日 : 2021年3月4日
- 読了日 : 2021年3月4日
- 本棚登録日 : 2021年3月4日
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