立花隆が膨大な取材を基に”臨死体験”という途方もない現象にメスを入れた力作(上下巻まとめてのレビューになります)
田中角栄や宇宙、石油と様々な対象を徹底取材してきた立花だが、この臨死体験は踏み込んではいけない領域かもしれないと思って読み始めた。だって臨死体験だよ。どう考えてもオカルトチックでなく本を書き上げるのは無理がある。
しかし、立花は決してオカルトに染まることなく、かといってそれを無視することなく、絶妙な立場で取材を進めていく。あくまで科学的に見て、どんな事実があるのか、どんなことが考えられるのかを追求していく姿勢が、臨死体験というキワモノを一つのノンフィクションに仕上げていく。
死の受容として世界的に有名な心理学者キューブラーロスが後年死後の世界の実在を熱心にとなえていたことに始まり、ロバート・A・モンローやジョン・C・リリーといったこの世界のスター達の名前がこれでもかこれでもかと出てきて、いよいよ佳境へ。
結局、臨死体験は脳内の出来事である可能性が高いが、それでは説明できない部分をいくつか残している。謎は解けきらないまま本は終える。
果たして死後の世界があるのか。死の時を迎えれば誰でもわかることだ。
臨死体験のをした人のほとんどが、自身の生を深く考え直したと言う。人は死を考え、そこからまた生を考えていくのだと思う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
死生学
- 感想投稿日 : 2011年7月21日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年7月21日
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