よくまとまったいい本ではあるが、哲学と科学の相互交渉、相互連絡を主張するのであれば、いただけない記述も多かった。
「哲学用語はやたらと『〜主義』という言葉を使って、もったいぶった感じがして困る」(15頁)
〜主義という言葉は、-ismという英語にシステマティックに対応しており、何らかの思想的立場を表すシグナルとして機能している。
専門用語が存在することにはそれなりの意義があるということを、同じ専門家として、脳科学や心理学と、哲学とは分かり合えてもいいはずなのに。
筆者は哲学を侮っているとしか思えない。
こういう、科学者による無意味なマウンティングに生産性があるとは思えない。
それを言えば、同じ論法で筆者や脳科学を批判することができてしまう。
「本書で筆者が紹介する脳科学の用語はカタカナばかりであって、日本語で記す意味がよくわからないし、ルー大柴かよ!わかりにくい!もったいぶった感じがする!」みたいに批判されても、唯々諾々と筆者は受け入れるのだろうか?
こういう無意味な文を、啓蒙書に挟み込む程度の研究者とは思っていなかった。もっとマシな人だと思っていたのに。
金井さんの論文はいくつか読んだことがあり、刺激も受けたが、その研究者としての姿勢には失望した。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
一般書
- 感想投稿日 : 2017年1月13日
- 読了日 : 2017年1月13日
- 本棚登録日 : 2017年1月13日
みんなの感想をみる