小説を読んで「酔う」という感覚を味わったのはこれが初めて。気持ち悪いし不快感さえあったけど、途中で終えたら余計にそれが残りそうで、一気に読み終えた。
以下本作の印象と好きな部分の引用。
忘れようにも、思い出せない。人を失うということ、その事実が自分の内面に巻き起こす果てしない思考、問いかけの繰り返しと混乱。冷静な筆致とは裏腹に時系列も人称もごちゃ混ぜで支離滅裂で、だからこそそれがものすごくリアル。メモや日記、当時書いていた書きかけの小説、そういったものから記憶をたどりながら綴られる、「私」の「彼」を巡る記憶の旅。
「彼女とのことを、どうしても書かずにいられなかったと友人は言った。彼女と直接話すことはできなかった、会ってもどうせ聞いてくれないに決まっていた、だから他人の目に触れるような形でそのことを書いた。彼女の目にも触れればいいと思った、そうすれば彼女はその言葉に影響されるだけでなく、それが公になることで余計に影響を受けるはずだから。たとえ彼女が影響を受けなかったとしても、そのことを世間に知らしめたというだけで、彼の意図に反して短命に終わってしまったその恋愛を、言葉という息の長いものに変換できたというだけで満足なのだ、と彼は言った。」
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2011年9月18日
- 読了日 : 2011年9月18日
- 本棚登録日 : 2011年4月29日
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