夏の嘘 (Crest books)

  • 新潮社 (2013年2月28日発売)
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本棚登録 : 314
感想 : 36
3

・朗読者の著者ドイツの作家シュリンクの短編集。ジュンク堂福岡店の数人で読む外国文学特集の棚で、みつけた。朗読者の本はまだ読んでないが、その映画 君に読む物語は衝撃の作品だった。

全編を通して感じる不安と不確かさ。不測の人生の物語。あのとき、どうして本当のことがいえなかったんだろう。

・シーズンオフ
甘酸っぱい。すれ違い。ときめき。
相手によく思われたいためについたほんの少しの嘘。微妙な感情のズレ。
お互いが住むところと習慣を譲れないってたぶん現実だろうなぁ。
美しい小説。

・バーデンバーデンの夜
彼にとって気軽なてれーぜと疑り深い恋人のアンはどういうバランスなんだろう。どっちも予定を、譲らない。
・森の中の家
人はどんな幸せでも永遠に続くことを望むのだろうか。
彼の彼女をしばるというか閉じ込めておくための猟奇的な行動はだれもがなり得る姿なのかな?作家という同業者って難しいのかな?

・真夜中の他人
ニューヨークからフランクフルトにいく便からはじまる。
つかのま隣の男の話すはなしがあんなことになるなんて。そんなことあるかな?という現実離れしてるはなし。
アラブ地方におけるヨーロッパ女性の売買。

・最後の夏
教授としてフランクフルトから毎年ニューヨークに招かれ男の晩年の話。
付属物の幸福のための付属物を集めただけの現実。

・リューゲン島のヨハン・セバスティアン・バッハ
ぼくの知らない噛み合ってなさそうな父の過去、バッハの好きな82の父。ピアノも弾けた。
人生のたがが外れてしまうとどんなことになるか。
父のことを何も知らないと思って知ろうとした作者。親が生きてるうちにその試みができたことがただ1つの真実だと思った。

・南への旅
彼女が自分の子供たちを愛するのをやめた日。世間的には、優秀な子供たち。
彼女の嗅覚や味覚が失われ、機能が突然ダメになる。それを知ってるのは医者だけ。

愛っていうのは感情じゃなくて、意志の問題なのよと、彼女の母は言ってた。

愛って、なんだろ。
朗読者を思わせた若いときの恋人との再開。なんてすれ違い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年7月9日
読了日 : 2020年7月10日
本棚登録日 : 2020年7月9日

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