海燕文学新人賞受賞作。
驚いたことに受賞は1990年。
自分は30年以上遅れていると思った。
本書を知ったのは
平野卿子『女ことばってなんなのかしら』。
P54「『僕っ娘』はなぜ現れた」。
「女の子の一人称をキーワードにした
小説といえば、なにをおいても松村栄子
『僕はかぐや姫』をあげないわけには
いきません」
裕生が〈僕〉使う理由は、自分が女の子である
ことは「こっちにおいといて」生きたいから。
理不尽に思える実存への意志でもある。
だが「自分が女であることをいやおうなしに
意識させられる」現実に
「裕生は、自分が考えていた、少年のもつ
『性以前の透明な人間性』は幻想にすぎない
ことを悟る」
幻想なのか…。
「あのね、男とか女とかじゃないと思うのよね。
(中略)つまりね、地球上に四十億人の人間が
いるとするじゃない?恋人は四十億人から
選ばれるの」
「物語の最後で、裕生は両性が共有している
〈わたし〉を選び取る決意を」する。
ジェンダーフリーの素晴らしい話だと思った。
思春期の女の子が〈僕〉を使う解説も
素晴らしかった。
①女らしさの規範から脱して「男の子のように
生きたい」という気持ち
②「少女」から「女」への移行にたいする
恐れやためらい
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- 感想投稿日 : 2023年11月12日
- 本棚登録日 : 2023年11月12日
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