表題作を含む6つの短編集です。
圭裕・裕大の兄弟と、みひろの3人がそれぞれ短編ごとに入れ替わり、主人公になります。
商店街で育った幼なじみでもある3人ですが、高校時代に圭裕がみひろに告白をしたところから、3人のバランスが少しずつ崩れていきます。
この小説のいいところは、同じ時間を語り手を代えて見るのではなく、次の短編へうつると時間も進んでいるところです。
3人それぞれの気持ちと体のすれちがいが、痛々しく、でも時間だけは平等に流れていくことで、変わらないように見えた3人も少しずつ前に進んでいきます。
小さな3人の輪のなかで絡み合った恋愛感情が、オトナになってもここまで絡み合うものなんだろうか?とも思います。
けれど、そう思っていてもなお、ひとつひとつの物語にひきこまれてしまうのが、窪美澄さんの小説のすごさです。
気持ちだけでも、身体だけでも、つながりきれないものがこの世の中には存在します。
それを知ることで、読み終えたとき、たいせつな人に出会えて、一緒に歩めることは、とてつもない奇跡なんだなと、思いました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
窪美澄
- 感想投稿日 : 2020年4月17日
- 読了日 : 2020年4月17日
- 本棚登録日 : 2020年4月17日
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