伊藤くん A to E

著者 :
  • 幻冬舎 (2013年9月27日発売)
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本棚登録 : 2108
感想 : 316
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イケメンだけど性格最悪なおぼっちゃま・伊藤くんと、彼を好きな女性、つきまとわれてる女性、伊藤を転がして内心あざける女性たち。

心の余裕があるときにだけ、開いて読むことをオススメ致します。

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伊藤くんの周囲の女性たちが主人公の、5本の連作短編集。

伊藤くんはもちろん好きなれないのですが、かといって、それぞれの女性たちも好きになれない…。
まれにみる、応援したい人がひとりもいない小説でした。

「傷つけられない」ことを絶対的な信条にして、分厚い鋼鉄の殻にとじこもり、やらない言い訳をふりまきまくる伊藤くん。
「世の中にはこんな人もいるんだな…、広いな世の中って…」と思いました。
(いや、多分おぼっちゃまでもイケメンでもないけど、伊藤くんみたいな芸人さんいたな、1人…)

そんな彼にふりまわされ、傷ついてボロボロになるまわりの女性たち。
でも、よくよく見ると、その女性たちもまわりが見えなさすぎて自分が大事なあまり、無意識の悪意や無邪気な善意でことごとく、他の人をボロボロに傷つけています。

最初は伊藤くんのイタさを嘲っていたはずなのに、気がつくと「もしかしてわたしも、この女性たちみたいにイタいとこ、あるんじゃ…」と不安になってくる、そんな小説です。

読み終えてもスッキリはしないし、読んでいるあいだ中、伊藤くんや女性たちにイライラしっぱなしでしたが、でもなぜか最後まで読んでしまった事実に著者の力量を感じ、おそろしくなるのでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年9月3日
読了日 : 2020年9月2日
本棚登録日 : 2020年8月28日

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