タイトルが気になって手に取りましたが、心の病とそうでない場合の境界線を教えてくれる本、ではなく、よく聞く心の病をそれぞれ解説した本です。
わたしはうつ病の回復期にいますが、それでも「うつ病」の章の最後を読み、ひどく落ちこみ、それ以上進められなくなりました。
具合も回復しつつある今読んでも、そうなのですから、うつの症状の強いときに読んでいたら、もっと落ちこんでいたと思います。
理由は「自分はうつ病だ」と嘘をついて、傷病手当・障害年金や生活保護をうけようとする人がいることを書かれた、「『偽』のうつ病」のところを読んだためです。
確かにそうした人は世の中にいて、その行為は許されるものではないのですが、この部分を読んでいると「お前もうつ病と嘘をついているんじゃないの?」と言われているような気がして、落ちつかなくなりました。
著者が「はじめに」で書かれているように、心の病気を診断するためには、患者の症状の評価が中心になります。
つまり、判定者の主観が入ってきてしまうおそれがあるのが、心の病を診断するときの難しい点です。
わたしはうつ症状がいちばん強かったときは、「自分は怠けているのではないか」「働けるくせに、うつと嘘をついているだけでは」と、自分で自分を責めていました。
つまり「自分で自分はうつと嘘をついている愚かな人間ではないか」と疑っていた状態だったのです。
きっとその状態で「『偽』のうつ病」のところを読んでいたら…「やっぱり自分は嘘つきなんだ。最低な人間なんだ」と思っていたでしょう。
この本はおそらく、読む時点で「心の病にかかっていない人」を読者にしていると思います。
そうした人にとっては、一般知識をコンパクトに得られる本になりうるかもしれません。
しかしこの「どこからが心の病ですか?」というタイトルが、「自分はもしかして心の病にかかっているのではないか」「いや、自分が心の病だなんてウソだ」と不安な気持ちの方も、ひきよせてしまうのです。
この本に限らず、本を開く前に伝えたいのはは、「その本を読むかどうかは自分で決められる」ということです。
読み進めることも、読むのをやめるのも、自分で決めていいのです。
それさえ知っていれば、どんな本を手にしてもきっと大丈夫です。
- 感想投稿日 : 2020年4月7日
- 本棚登録日 : 2020年3月31日
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