クリエイター(とその卵)たちが集う、トキワ荘のようなスロウハイツ。
クリエイターはみんなこうなのだろうかと思うほどに、ふだん鈍感に生きているわたしには、彼らの鋭敏なアンテナは時に鋭い刃物のような緊張をも強いるけれど、そのなかにある互いへのリスペクト、強さと優しさ、不器用さが読み手を苦しくさせるほどに押し寄せてくる。
そして、登場人物を丁寧に描いた(特に大きな事件もない)上巻に比して、下巻の展開の早さ、驚くほどの伏線の回収には、もはや「やられた!」という気分。
can、ableには鳥肌です。
絶望のあとの希望が素晴らしくて、ラストのほうはページをめくる手が止まらなかった。
上巻で登場人物のキャラクターをしっかり押さえていられたからこその下巻だと思う。辻村深月さんは、きっとスロウハイツにぴったりの作家さんなのだろうな。
ある意味では、スロウハイツの住人達はクリエイターであり役者でもある。すべてわかったうえで、「あ、ここにもヒントがあったのか!」と楽しみながら再読してみたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
辻村深月
- 感想投稿日 : 2015年1月25日
- 読了日 : 2015年1月25日
- 本棚登録日 : 2015年1月25日
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