記号と事件: 1972-1990年の対話 (河出文庫 ト 6-5)

  • 河出書房新社 (2010年8月3日発売)
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感想 : 16
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ドゥルーズ初挑戦なので、インタビュー集なら何とかいけると考えて手にしたけど、だいぶ時間がかかって読了。
正直理解できたのはほとんどないけれど、所々魅力的な言葉、フレーズがあったので、それを記録として残しておきたい。あと内容とは関係ないが、フーコーへの畏敬の念をつたえるドゥルーズに好感をもった。

「概念とは、一般的な概念とは、一般的な思考の流れに作用をおよぼす特異性のことなのです。概念がなくても思考することはできる。しかし概念があらわれたときはじめて、真の哲学が成り立つのです。」(p.70)

「強者とは、ふたつの陣営があったとき、そのどちらかにつく者のことではない。強いのは境界なのだ。」(p.96)

「文学には、文学でしか実現できない独自の創造的意図がある、そもそも文学が、文学とはおよそ無縁の活動や意図から直接に生まれた残滓を受け取る必要ないということを忘れているのです。こうして本は「副次化」され、マーケティングの様相を帯びてくる。」(p.263)

「創造者とは、独自の不可能事をつくりだし、それと同時に可能性もつくりだす人のことです。発見するためには、マッケンローのように壁に頭をぶつけていなければならない。壁がすりへるほど頭をぶつけなければならないのは、一連の不可能事がなければ逃走線、あるいは創造という名の出口を、そして真理を成立させる〈偽なるものの力能〉を手に入れることができないからです。」(p.269)

「大地を離脱しようというのではありません。そうではなくて、大地のあり方を左右する液体や気体の法則をつくりだすことによって、なおさら大地に密着していこうというのです。」(同)

「哲学史は、ある特定の哲学者が述べたことをもう一度述べるのではなく、哲学者には、かならず言外にほのめかしているものがあるが、それは何か、哲学者本人は述べていないけれども彼の語ったことのなかにあらわれているものは何なのか、ということを語るべきなのです。」(p.273)

「かくかくしかじかの点について見解も考えももたないというのはとても気持ちがいい。私たちはコミュニケーションの断絶に悩んでいるのではなく、逆に、たいして言うべきこともないのに意見を述べるよう強制する力がたくさんあるから悩んでいるのです。」(p.277)

「偉大な哲学者は、優れた文体をもった偉大な文章家でもあるのです。哲学における文体とは、ほかならぬの概念の運動のことです。もちろん、文がないところに概念は存在しません。しかし文には、概念に生気を与え、一個独立の生をもたらす以外に目的はないのです。文体とは、国語を変異させることであり、転調することであり、言語全体がひとつの〈外〉をめざして張りつめた状態を指します。」(p.283)

「ニーチェがいうように、芸術家や哲学者は文明の病を見極める医師なのです。何がどうなろうと、彼らが精神分析にあまり興味をもたないのは、けだし当然といえるでしょう。精神分析は秘密なるものを極度に単純化し、記号も症候もさっぱり理解できないので、一切合切をロレンスが「ちっぽけでしみったれた秘密」と呼んだものに帰着させるわけですからね。」(p.288)

「思考のイメージを問うことで得られるのは、モデルではないし、手引きですらなく、むしろ参照すべき対象、あるいは絶えず異分野との交配をおこなっていなければならないことへの自覚です。そして現時点で参照すべき異分野が何かといえば、それは脳をめぐる専門知識だということになるでしょう。」(p.302)

「私は点というものが好きになれないし、定点を定める(ポイントをおさえる)ことは愚劣だと考えています。ふたつの点のあいだに線があるのではなく、線が何本も交差したところに点があるわけですからね。線が一定することはありえないし、点のほうは、あくまでも〈変曲〉であるにすぎないのです。だから当然、重要なのは始まりでも、終わりでもなく、〈あいだ〉の部分だということになる。事物や思考は〈あいだ〉に芽生え、〈あいだ〉で育っていくわけですから、腰を据えて観察すべきなのはこの〈あいだ〉であり、そもそも襞は〈あいだ〉に生まれるものです。またそうであればこそ、多線状の集合は折り返しや、交差や、変曲を含みもつことができるのだし、そこには哲学と、哲学史を、そして歴史学一般を、科学を、さらには芸術をひとつにつなぐ疎通が成り立つ。渦を巻く風のような運動が空間を満たし、さまざまに折れ曲がるうちに、その運動は任意の一点に顔のぞかせることがあるのです。」(p.326)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年12月17日
読了日 : 2017年12月16日
本棚登録日 : 2017年8月30日

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