木製の王子 (講談社文庫 ま 32-6)

著者 :
  • 講談社 (2003年8月1日発売)
3.32
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本棚登録 : 451
感想 : 35
4

マジで入手困難。
探した探した。
やっと入手できて、嬉しくてついつい読んじゃったけど、せっかくメルカトル鮎シリーズ順番通り読んできたのに、『鴉』の方が先だったんだね…(持ってたのに!)
でも本作品にはメル出てこなかったから無問題だった。
ただし『翼ある闇』『夏と冬の奏鳴曲』『痾』を読んだの前提の書き方してるので、前三作は読んでた方がいい。
私は読んでたけど、なにせ本作品を手に入れるのに時間がかかっちゃって、前作三作から間が空いてしまい、ディテールを忘れててちょっと悲しかった。

時系列としては『翼ある闇』の前後のエピソードという設定である。
本作品にはメル出てこないけど、読んでて「あぁ、このあたりでメル死ぬんだなぁ…」としんみりしてしまった。
木更津&香月コンビが『翼ある闇』以来の再登場で嬉しい。
やっぱり木更津&香月のコンビは好き。木更津は天才名探偵だけど、他のワトソン役と違って香月(ワトソン)は友人として敬意を払われてる。
木更津がイイ人だからかもしれない。
ても、天才なら犠牲者が増える前に解決してくれ。(笑)
ていうか今鏡家の事件は、世間的には木更津の滅茶苦茶な推理が真実としてまかり通ってるみたいで、驚いてしまった。

初期の麻耶さんの作品は、読者を置いていきかねない作風なんだよねぇ。その癖の強さ嫌いじゃないけど。
結局、宗教がらみの話だった。
信仰が動機と深く絡んでるので、およそ承服しかねるが、割り切るしかない。
その上で、時間が逆行して系図が逆さまになって、なんて(こんなの分かるか!)、よく思い付くなぁこんなの。という感想が強い。
晃佳が自分の父親(系図上)を「義父」と言ってるところがあって、麻耶さんは地の文で嘘つかないポリシーがあるので、この親子関係に何か秘密がありそうだってとこまでは推測できたんだけど。文字通り義父だったんだねぇ。

ただ、ちょっと宗教のそら恐ろしいところが描写され切れてなかった気がした。
聖家族を創造するには、対概念としての闇は不可欠なのかなぁ。家族が欲しかっただけなら、破滅の思想まで設定しなければ済んだんじゃないかなぁ。
だって規禎は宗尚のホントの息子でしょ?名前の法則で那智家の方の系図になっちゃったけど。
万が一再会出来たときにはちゃんと聖家族の方の系図に組み込めるような理論を構築すれば良かったのに。
安城くんが錯乱現場から脱出できたのは良かったと思ったけど、結局彼は自分の両親について誤解したまま田舎に帰ってしまったんじゃなかろうか。
まぁ、真実を知ったところで幸せではないか…。

あと『夏と冬の奏鳴曲』以来の如月烏有が出てくるけど、最初から最後まで釈然としないまま流されて生きてる。
可哀想に。烏有の記憶は果たして戻るのか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 麻耶雄嵩
感想投稿日 : 2019年9月1日
読了日 : 2019年8月31日
本棚登録日 : 2019年8月28日

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