誰か―Somebody (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋 (2007年12月6日発売)
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**「『誰か』: 杉村三郎と始まる心の旅路」**

『誰か』は、杉村三郎シリーズの始まりを告げる一巻完結の物語です。宮部みゆきさんが織りなすこの物語は、ある家族の深い絆を辿る旅に読者を誘います。それは、娘たちの愛する父の記憶をたどり、その人生に隠された物語を発見するプロセスを通じて、私たち自身の心にも響くものです。一見すると平凡な人生の背後に隠された真実を暴く旅は、まるで小さな宝箱を開けるようなワクワクとした感動を与えてくれます。

このシリーズは、一巻ごとに完結する物語でありながら、杉村三郎という一貫した主人公を通じて繋がっています。『ソロモンの偽証』や『模倣犯』といった、宮部みゆきさんの他の長編作品と同じく、深い人間ドラマと巧みに組み立てられた謎解きが魅力です。各巻が独立した物語でありながらも、杉村三郎シリーズ全体としての大きな流れやテーマが感じられるのです。

『誰か』を読んだ後に感じる寂しさは、物語との別れが名残惜しいからこそ。しかし、一巻ごとに完結するこのシリーズの素敵なところは、新しい巻に手を伸ばすことで、いつでも新たな物語に没頭できる点にあります。『ソロモンの偽証』や『模倣犯』にどっぷり浸かった経験がある方なら、この杉村三郎シリーズの物語も、同じように心に残る体験となるはずです。

『誰か』と共に始まる杉村三郎の物語の旅は、宮部みゆきさんの独特の世界観を堪能する貴重な機会です。毎巻新しい物語を楽しみにしながら、最終巻を閉じるその時までの寂しさを今から想像するのも、このシリーズの大きな楽しみの一つです。一巻ごとの完成度の高さと、物語全体としての深みは、宮部みゆき作品ならではの魅力を改めて実感させてくれることでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年3月14日
読了日 : 2024年3月14日
本棚登録日 : 2024年3月14日

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