アステカとインカ 黄金帝国の滅亡 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社 (2020年11月12日発売)
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感想 : 7

黄金を求め、未知の大陸を求めて冒険に出た者たちが侵略者となり、略奪者となり、残虐と不合理と残忍極まりない行為を繰り返していく。
読めば読むほど、特にインカ侵略のピサロの話はどんどん具合が悪くなるほど閉口モノだった(戊辰戦争の本読んだ時も残虐性に閉口したのを思い出した。なんだって戦争ってこんなに人の体をぐちゃぐちゃにすることに抵抗がなくなってしまうんだろう。ただ殺すだけ、命を奪うだけではなく、その後の遺体損壊→晒すというのが、嫌悪感の要因か。えげつない拷問と処刑がエンターテイメントだった時代というのが、もはや今の時代と価値観違いすぎて、心に線引きしないとぐはーってなる。)。
ピサロって悪い人のイメージだったけど、補強された感じ。
しかも異母異父弟やら従弟やら、ピサロたくさんいるし。
もうやめてくれーと思いながらページをめくった。
それくらい、記述が真に迫っていて詳細だった。
補給に関しても侵略者側が飢えてとんでもないものまで口にしながら生き延びていくこともあれば、兵糧攻めにされて滅んでいく国もあり。
前半のアステカの方はまだ見れた、というか、先にインカを読んで前半のアステカに戻ってきたので、耐性がついてしまったのかもしれない。
生け贄にする残虐なやり方は、侵略者たちに憎悪と復讐心を掻き立てたことだろうということも理解できた。
その憎悪の結果、略奪や処刑や侵略行為もろもろが、さらに増幅され、互いに増幅を重ねていったことも想像に難くない。
そんな中において、流行する疫病で滅ぶ侵略者たちや原住民たち。
目に見えないウイルスや細菌が原因となる病に対抗することがに難しいかをわからせてくれる。
そして、略奪や侵略を繰り返す男達の話の中に出てくる女性たちは、物のように侵略者たちに捧げられる話が多かったが、その中でも通訳としてやがて子まで成した女性の話が挟まれていたり、その子供がスペインでいかにたくましく生きたかにも触れられている。
あとがきに今日の状況について、この16世紀の出来事に端を発しているというのに、はっとさせられた。
ずいぶんと長い年月の間に染み付いてしまったのだろう。
書の初期の方には、インディオたちは大人しかったとも記述されている。
南アメリカ大陸で繰り広げられたこの殺戮の歴史は、黄金に目が眩んだ故だったのか、と思うとやるせないが、冒険にも金がかかる。その金を購い、さらに裕福になるためには、どこまでもトチ狂っていってしまうのかもしれない。
というか、この時代の人の生命や倫理観というのはこんなものだったということも踏まえて読まないと、やはりかなり厳しいものがある。

読み終わって、ふと、よくジパングはこんな目に遭わなかったなとつくづく思った。
湖の真ん中にある島のアステカですら滅ぼされ、インカですらも滅ぼされたというのに、まあよく生き残ったものだ。
大西洋を渡りきることの難しさ、スペインやポルトガルからすれば、アメリカ大陸の方が近かったのだから、まずはそこから征服意欲を満たしていった、としても、同じ頃日本にも鉄砲は伝来し、キリスト教も宣教師が来ていたのだから……補給路の長さ故なのかなんなのか、よく滅ぼされなかったものだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年1月17日
読了日 : 2021年1月17日
本棚登録日 : 2020年12月5日

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