まるで金庸の描くような武侠小説を舞台建てに本格推理を展開するというのは面白い。外功・内功・軽功などの言葉が飛び交う事できっちり世界観が構築できる。金庸をむさぼり読んだ頃を懐かしく思い出す。こうなってくると本格ミステリであることを忘れ、武侠小説としての面白さを期待してしまう。しかし、本書はこの世界観の中できっちり本格推理を展開しているのだ。それも密室ものとなれば面白くないわけがない。論理による謎解きが次から次へと展開されていくとことは、卓越した構成力を感じさせる。詰将棋のように本当に論理が1本しかないのかは微妙であるが、勢いで読めてしまうしそのことに不満はない。また、途中で明らかになる大掛かりな背景は少し「やり過ぎ感」があるが、武侠小説的には「あり」だと感じる。乱歩賞受賞作らしい才気ばしった感が感じられ、次回作が待ちどおしい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリ
- 感想投稿日 : 2021年10月8日
- 読了日 : 2021年10月8日
- 本棚登録日 : 2021年10月8日
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