20世紀前半ドイツの政治・生活を、キッチンのプランや台所労働から見ていく。
今世紀前半の欧米の家事労働の改善の努力、そして戦争の家事への介入はすさまじく、これを当時のドイツの政治とリンクさせて解説している。
フランクフルト・キッチンや、今もデザインが古びないバウハウスのキッチン、ヒルデガルト・マルギスの家事相談所:ハイバウディなど、家事を真剣に考える人達の個々のエピソードは大変面白い。
ここで取り上げられている台所の合理化、性的役割分担、戦争協力はナチス固有のものではないので、他国の事例とリンクしながら解説しないと、どこがナチス固有の特徴で、どこがそうでないのかがわかりづらい。
キッチンの改善において、時間効率の向上、衛生の確保、栄養の改善、主婦のやりがいと楽しみの確保といったものを目指しているはずなのだけれど、これらがどこまで確保されたのかよりも、戦争協力にどれだけ資したかという視点に走りがち。
キッチンが何のために有るのかを考えたら、生活者視点の記述がもう少しあっても良かったのでは
コーワンの「お母さんは忙しくなるばかり―家事労働とテクノロジーの社会史」の方がコンセプトがより良かった。
ファンタが戦時中のドイツで代用品として生み出されたのは知っていたけれど、僕の大好きなマギーブイヨンが、ナチスドイツの戦争協力のため、省力レシピの鍋料理にマギーブイヨンを大々的に推奨するキャンペーンを打っていたとは知らなkった。
いや実際マギーブイヨンを使った煮物は栄養的にも、味のまとまり的にもとても実用的なんだけど、まさかナチスドイツで推奨されていたとはねぇ。
- 感想投稿日 : 2021年9月11日
- 読了日 : 2021年9月11日
- 本棚登録日 : 2021年9月11日
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