- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000022316
感想・レビュー・書評
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こういう人がいたから女性の社会的立場は変わって来た。わたしが大学に行ったり自由を謳歌したりしていられるのも、野枝さんのような方がいたからだ。ありがたい。
結婚制度はいらない、中絶は認めるべき、職業としての売春も認めるべき……人としてまっとうに生きるとはどういうことか、問い続け、闘い続けた。
あとがきより。「性を商品として売っている娼婦たちは、それを仕事としてやっているのにハシタナイとか、賤業婦とかいわれてしまう。ほんとうは主婦だって、家庭に囲いこまれ、でもそれをおおいかくすかのように、あいもかわらず家族道徳が説かれている。男女がセックスをしたら、一体化したような快感をあじわうだろう。愛しあうカップルはひとつになれるんだ、契りをかわして結婚しようよ、家庭をつくろう、それがひととしての自然なんだ、だからそれをこわしてはいけないと。ウソッぱちだ。ひとはひとつになっても、ひとつになれないのだから。でも、ひとつになれるとおもいこむことによって、みんな夫とか妻とか、そういう役割をすすんでひきうけてしまう。(略)チクショウ、チクショウ。そんなのぜったいゆるせない。きっと、野枝が生涯をかけてぶちこわそうとしてきたのは、これだったんじゃないかとおもう。」
確かに。その通りだと思う。
文体が「かっこいい」「しびれる」「チクショウ」など、私情丸出しで驚いた。こうした硬めの本?にしては珍しいのでは。自費出版の本のような…少し違和感をもちつつ、でも一方では楽しみつつ読んだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
"現代のアナキスト"と自称する栗原康氏。
彼の書いた『伊藤野枝伝』は熱いが、危険な匂いもしてくる。爆けるアナーキーな文体は、人によって好き嫌いが大きく分かれそうだ。
明治から大正の時代。28歳で大杉栄と共に虐殺された野枝の人生をザクッと知るには良い一冊だ。
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今よりずっと自由を主張しづらい時代に因習にとらわれずに駆け抜けた女性の伝記です。アナキストとは必ずしも結びつかないと私は思う、前のめりな文体...今よりずっと自由を主張しづらい時代に因習にとらわれずに駆け抜けた女性の伝記です。アナキストとは必ずしも結びつかないと私は思う、前のめりな文体に最初はかなりとまどいましたが、一気に最後まで読めました。平塚らいてふさんや青山菊枝さんのほうが素敵に思える部分も多々ありました。2022/11/21
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Shogoさん、コメントを有難うございます。
伊藤野枝について書かれたものを以前から読みたいと思っていました。村山由佳さんの本も読んでみて、...Shogoさん、コメントを有難うございます。
伊藤野枝について書かれたものを以前から読みたいと思っていました。村山由佳さんの本も読んでみて、時代を疾走した一人の女性の生きざまを見せつけられた思いがしました。
( =アナキストかと言われれば、言葉にしづらいですが…)
本棚の中に『二十歳の原点』があり驚きました。2022/11/21 -
ナオさん 自分の単なる読後の感想程度に残そうとしましたが要領得ずにコメントになってしまいました。ナオさんのコメントも見て書いたという意味では...ナオさん 自分の単なる読後の感想程度に残そうとしましたが要領得ずにコメントになってしまいました。ナオさんのコメントも見て書いたという意味ではあながち間違ってはおりません。ありがとうございました。2022/11/21
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面白くて一気に読んだ。文章にリズムがあって、ふざけていて?筆者の熱い気持ちが伝わって、疾走感、読み終わって息が上がってる感じ。タイトルもいい。
伊藤野枝の評伝といえば、遠い昔、学生の頃に読んだ瀬戸内寂聴「美は乱調にあり」。内容、雰囲気ほとんど覚えていないが、なんか憧れを感じていたような気がする。ものすごく平凡な人生を送って、あの頃の私に謝りたい気分だ。いや、今からでも遅くない!と言いたいが、伊藤野枝は28歳で亡くなってるんだもんな。
高等小学校卒業の写真が14歳に全く見えない。
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まさに「爆裂評伝」。
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「こまったときにひとをたすけようとするのが、アナキスト。殺そうとするのが、官憲だ」←そり
資本主義も貞操観念も唾棄すべきものというポーズは取っていてもやはり会社に勤めて給料をもらったり一夫一妻制にこだわったりしてしまうのが一般的な生活態度だと思うが、実生活においてもアナキズムと自由恋愛を貫き通し、なんとかなるの精神で生き抜いた(そして殺された)人がいたという本。
こんな人でも自分の中の奴隷根性を捨て去ることに困難を感じていたというのは無力感を覚えるが、社会の枠を外れて極端に走っても案外暮らしていけるのかもという希望も持てた。 -
2020.02.22 図書館
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伊藤野枝をご存知でしょうか?
何を隠そう私は知りませんでした。
皆さんも知りませんよね。
3人目の子供が女の子だったらのえという名前をつけようと決めていました。
オアシスのノエルギャラガーにちなんで。
なかなか被らない良い名前かと自負していたところ、私の周りで2人だけある女性の名前を口にしたのです。
『のえって、大杉栄の愛人の?』
知りません。
なんなら大杉栄も知りません。
すいません、不勉強で。
その2人は、義理祖母と弟でした。
2人の共通点は読書量の多さです。
それにしても聞きづてならないのは、『愛人』という点です。愛する我が子の名が、誰かの愛人(歴史的愛人)の名と重なっているなんて!
愛人のレッテルは強烈ですが、どういう経緯で?という事で、本を手に取りました。
読んでわかったのは、愛人というレッテルは伊藤野枝の知性と先見性、行動力を疎むあまり、その存在の都合の悪さ故に、貼られたレッテルだったいう事です。
著者がかなり伊藤野枝のことが好きなことが読んでいてわかりますが、そのおかげもあって私もかなり魅力的な人物だと感じました。
確かに、本能のまま破天荒な人生を歩んでいる部分もありますが、言ってること、やってることはかなりまともだと思います。
それも時代が今と全然違う、世の中の女性に対する考え方が今とは比べ物にならないくらい疎かにされている環境の中、その地位向上(←こんな表現すらないくらいの時代に)のために必要な発言をし、行動をする。喧嘩を売りまくる!
彼女やその周りの仲間たちが作り上げたものが、その後の基礎になっているように感じます。
関東大震災の混乱に乗じて暗殺されますが、やはりその先見性を疎まれ、怖がられていたのだと思います。
死をも恐れず、女性の地位を、人権を、そして個の存在を主張し続けた、こんなロックな人は他になかなかいないかもしれない。
我ながら良い名前をつけたものだ。
愛人?
アナキスト?
ふん、なんとでも言いなさい、あなたがなんと言おうと、私はのえちゃんなのよ!! -
いやぁ、面白かった。評判がいいというのは知っていたけれど、読んでみてよかった。
幸徳秋水とか大杉栄とかそのあたりの歴史の部分ってあまりよく記憶していないのは、学生時代に勉強をさぼっていたからか、その部分の授業が薄かったからなのか、よくわからないが、ちょっとこの時代をもうちょっと知りたいという好奇心もむくむくと。
著者の語り口は好き嫌いが分かれるだろう。私も途中鬱陶しいなぁ‥と思うものがあったのだが、あとがきを読んで、ああいいなこの感じ‥と思うようになった。
参考文献もきちんとあげられていて、あとからいろいろ読みたい部分を読むのにも便利そう.
自分の頭を使わないから、奴隷になるというこの思想にはすごく共感。
野枝の結婚についての自分のようにこんな思想を持っていても、家に大杉といるとお茶とか出したりしちゃう‥なんて書いちゃうあたりがかっこいい。
そうそう、正直な人ってかっこいいんだよねぇ。 -
元々、内容が面白そうだし、強い女の人の物語が好きで読み始めました。
硬い文章だと読めないかもなぁ、と思って読み始めてびっくり。著者:栗原さんの文体が野枝の生き様のスピードに合っているような、カジュアルなんだけど、力強い。きっぱりと面白い。想像してた文体と真逆。ぐいぐい読める。 -
ウリのひとつなのだろうが、名詞をどんと置く文体の多用が気になる。
なんとなく受け売りの人(受けも辻や平塚や大杉や渡り鳥的な)と感じていた野枝を"迸る感情"、と肯定的に書いてあり、自分も少し肯定的に考え直せそうだ。