小鳥の歌からヒトの言葉へ (岩波 科学ライブラリー92)

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  • 岩波書店
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  • / ISBN・EAN: 9784000065924

感想・レビュー・書評

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  • 小鳥のさえずりと、ヒトの言葉にどんな重なりが見えるんだろう、と期待しながら読んだ。

    小鳥の歌は、文節に区切られたフレーズを繰り返す。ただし、実験に用いられたジュウシマツについては、そのフレーズが複雑に組み合わされていることが分かる。

    複雑な歌を歌える個体の求愛行動が成功していった結果、それらが定着したということらしい。
    そして、それは人間にも当てはまるのではないか?という。
    歌やダンスというアピール方法に詞という文法が乗せられていった。
    やがては詞が言葉としてコミュニケーションの共通手段となっていく仮説。

    私たちが歌に共感し、ある種の美を感じるのは、その旋律の妙であったり重なりであったりする。
    そういう感情の動きも、鳥の歌と重なっていたりするのだろうか。

  • ふむ

  • Sun, 26 Jul 2009

    おもしろいおもしろい
    N君がビブリオバトルで紹介してくれて,読みたいなぁとおもっていたのを 勢いで読んだ.

    自分の最近の研究ともリンクして面白かった.

    ジュウシマツのもつ,歌の文法構造と脳機能の関係がわかりやすくかいてある. 特に RA HVC Nlf の領野の階層構造が興味深かった.

    最近,人間のブローカ野が持つ 統計処理能力に興味がわいているのだが, 結局のところ私の興味は 計算論なので,記号運用機能をになえる脳なら誰の脳でも構わないのである. 

    脳でなくてもいい. というわけで,ジュウシマツで見事に
    1.構文構造(文法構造) = Nlf
    2.チャンクの生成=単語抽出=HVC
    3.音要素=音素=  RA

    という関係がなりたっているのが面白い. より,発想を広げると RAが運動野(一次運動野) HVCが運動前野と関係あると,僕的には完璧なんですが.

    やっぱり,「教師無し形態素解析」は重要だろう.
    これと,音素認識揺らぎ の部分まで含めて統合的に上から下までモデル化できたら 岡ノ谷さんの言うところの 内容と形式の独立進化仮説 は計算論的には問題なくいける気がする. というか,いけるでしょ. 少なくとも,形式には形式の情報量縮減の効果が無くては,ムダが多い.

    しかし,解析の方向では,それでいいんだが,なぜ,そういう構造・チャンクが系統発生的に「生まれて来たのか?」という点では まったく謎は解けない. やはり,意味なり何かが居る・・・・. ただたんなる,進化上のダイバーシティ,ナチュラルドリフトだというなら,かなりトリッキーだ.

    以下,読書メモ

    人の方がたくさんの倍音が現れるため横縞が多いp4

    # 鳥の鳴き声,きれいなのにな. 
    でも確かに単音ぽい

    フェルナンド・ノッテボーンと小西正一により鳥の歌研究は神経科学との接点を持ち始めるp5

    鳥の歌の学習過程とヒトの音声言語の獲得過程にたくさんの共通点があるからだ p5

    ヒトでは喉頭にある声帯が振動して音を作るが,小鳥では気管支の左右にある鳴管というきかんが音源である p7

    HVC核 と呼ばれる部分が歌をたんとう. ヒトの言語も小鳥の歌も,大脳の片半球に局在する行動なのである.p10

    ある言語を母語として何の苦もなくしゃべれるようになるためにはおよそ三歳までにその言語がはなされている環境に生活し その言語にもちいられる音声の特徴をきおくせねばならない
    # 音素モデルの獲得は3歳まで? ってことだよね.

    歌の学習過程で聴覚入力が必要な事,歌の感覚記憶が必要な事があきらかになった.p11

    意味の欠如 p14
    # 文法が豊かなら意味があるというわけでもない.

    求愛と縄張り防衛の意味しか持たない p14

    文化人類学のスペルベルの言い方を借りれば,鳥の歌には「伝達意図」はあるが【伝達内容】は欠如しているのだ p14

    日本のキンカチョウの歌う歌は,アメリカで聴いてきた,キンカチョウの歌とは全く異なっていた.p19

    歌行動は,雄性ホルモンのテストステロンにより制御される.p22

    記号列からチャンクを切り出す方法は多分に直感的であり,恣意的であった.p28

    可変長Nグラムモデル

    ニコラス・ティンバーゲンの4つの質問行動のメカニズム 発達 機能 進化 p31

    動物行動学は>四つの質問は至近要因の研究と究極要因の研究とに分離するようになってしまった.p34

    しわくちゃなのは> 脳の絵ではなく,ヒトの大脳皮質の絵であるp38

    ほ乳類では神経細胞を層状に配置する皮質構造が発達したが,鳥類では>神経核という機能的な固まりを作り,それらを接続する方法が発達した.p39

    HVCが歌全体の構造をつくり,RAがそれぞれの音要素を受け持つことになるp62
    #HVCが運動前野?RA運動野?

    Nlfの損傷により複雑な遷移構造をもった歌が,単純な曲に変化してしまう事がわかった.単一のフレーズしかうたえなくなってしまった.p63

    左のHVCを損傷すると,歌の音響構造と遷移構造が全く壊れてしまい,歌は単純に雑音をならべたものになってしまうp64

    左RAが損傷されると高い周波数の音要素が欠落,右RAが損傷されると低い周波数の音要素が欠落p67
    # Nlf 文法 HCV チャンク(形態素) RA 音素 ジュウシマツに歌をきかせて強化学習させた>なんと餌がもらえるほうの歌を好んでしまい,自分のもとのうたをわすれてしまったのだp82

    家禽化によって捕食圧がとれて>生まれた子供も歌が上手になる
    #最近の子はカラオケだけはじょうず?

    内容と形式の独立進化仮説 p105

    家禽化による淘汰圧の緩和は性淘汰の方向を促進する>焼き鈍し説 とよぶ p106
    # 性淘汰と捕食の淘汰. どんな状況でも淘汰はあるんですね.

  • 予想以上に面白かった.違う分野の研究者が研究の現場を含めて語ってくれており,ためになる.
    最終的にはヒトの脳にまで応用したい研究であろうが,ブラックボックスの中身がなんであるのかということには,どうやったら踏み込めるのだろう.

  • ジュウシマツの歌の複雑性は、飼育によって他の淘汰圧が減ったことで性選択による影響が大きくなったため。
    ヒトの言語の文法も同様に考えられないか?
    より複雑な歌を歌える個体が選ばれた結果文法のもとができた?

  • 著者の岡ノ谷一夫先生の
     ハダカデバネズミ : 女王・兵隊・ふとん係 / 吉田重人, 岡ノ谷一夫著.
    を、先に読んでいて、
    そちらは、専門的な話を、分かりやすい文体で書いてあったので、
    他の著書も読んでみようと思ったんです。

    この『小鳥の歌からヒトの言葉へ』も、分かりやすい文体で、読みやすいんですが、
    いかんせん、内容(小鳥の歌)にあまり興味が持てず、斜め読みに終わりました…

  • 著者は文系(という分け方がもう古いが)出身の科学者という一風変わった経歴の持ち主,理研で生物言語研究チームリーダーを務める。日本固有の鳴禽ジュウシマツをモデルとした求愛歌の獲得過程の研究から,音声コミュニケーションの生物学的基礎,さらにはヒトの言語の獲得過程や進化過程に思いを馳せる。入門書としてだけでなく,楽しく読める研究譚としても秀逸。

  • 肩の力を抜いて論文が読める。メカニズムの部分は難しいが、わからなくても導き出した推論を明確にしてくれる。歌や言葉って確かに不思議。。聴覚系へ与える影響についても面白く書かれている。鳴くのではなく、歌う。言われてみれば確かに文法を伴っているように思える。丁度英語を勉強している時期に見つけたサイエンス本である。

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著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科教授

「2020年 『人生行動科学としての思春期学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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